
親が老人ホームなどの施設へ入居して実家が空き家になると、「誰も住んでいないのに固定資産税は払うの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
結論からいうと、親が施設へ入っただけでは固定資産税がなくなるわけではありません。
基本的には実家の所有者がこれまで通り固定資産税を支払います。
この記事では、親の施設入居後に実家の固定資産税がどうなるのか、誰が払うのか、空き家になると税額が上がることがあるのかを分かりやすく解説します。
結論|親が施設に入っても固定資産税はそのままかかる
まず押さえておきたいのは、
「親が老人ホームへ入った=実家の固定資産税が変わる」わけではない
ということです。
固定資産税は、その年の1月1日時点で土地や建物を所有している人に課税される税金です。
そのため、親が施設へ入って実家に誰も住まなくなっても、親名義のままであれば基本的に親が納税義務者です。
たとえば、
父親名義の実家
↓
父親が老人ホームへ入居
↓
実家は空き家になる
↓
名義は父親のまま
というケースなら、原則として父親に固定資産税の納税通知書が届きます。
「住んでいないから固定資産税がかからない」という仕組みではありません。
親が施設に入った後の固定資産税は誰が払う?
基本的には、実家の所有者が払います。
固定資産税では毎年1月1日時点の固定資産課税台帳に所有者として登録されている人が納税義務者になります。
そのため、実家が親名義なら親です。
子どもが実家を管理していたとしても、それだけで子どもに固定資産税の納税義務が移るわけではありません。
整理すると次のようになります。
| 実家の状況 | 原則として固定資産税を払う人 |
|---|---|
| 父名義 | 父 |
| 母名義 | 母 |
| 父母共有 | 父母など共有者 |
| 子どもへ名義変更済み | 子ども |
| 相続後 | 相続した人など |
「施設へ入った人」ではなく、誰がその不動産を所有しているかを見ると分かりやすいでしょう。
子どもが代わりに固定資産税を払ってもいい?
実際には、親が高齢になると子どもが固定資産税の支払いを手伝うケースもあります。
たとえば親の口座から引き落としたり、納付書を預かって家族が手続きをしたりすることです。
ただし、
子どもが支払い手続きをした=子どもの税金になる
わけではありません。
あくまで納税義務者は所有者です。
特に兄弟姉妹がいる場合は、親のお金と子どものお金を曖昧にしない方が安心です。
固定資産税だけでなく、老人ホーム費用、医療費、実家の修繕費などが重なってくると、「誰がいくら立て替えたのか」が分からなくなりやすいためです。
できれば支払記録を残しておきましょう。
納税通知書はどこに届く?
親が施設へ入居すると、意外と困るのが郵便物です。
住民票を施設へ移した場合でも、固定資産税の納税通知書の送付先について確認しておくと安心です。
自治体によっては送付先変更などの手続きが用意されています。
実家が完全な空き家になるのに納税通知書をそのまま実家へ送り続けると、
「気付かないまま納期限を過ぎていた」
ということにもなりかねません。
老人ホームへの入居後は、固定資産税だけでなく役所、保険、銀行などの郵便物をどこで受け取るのか整理しておくことをおすすめします。
【関連記事】老人ホーム入居直後にやること15選|家族が最初の1週間で確認したい手続き・準備
実家が空き家になったら固定資産税は上がる?
ここは誤解されやすいところです。
親が施設へ入り、実家が空き家になったというだけで、すぐ固定資産税が何倍にもなるわけではありません。
住宅の敷地には「住宅用地の特例」があり、一定の条件を満たす住宅用地について固定資産税の課税標準が軽減されています。
現在の制度では、小規模住宅用地の200㎡以下の部分について固定資産税の課税標準が6分の1、200㎡を超える一般住宅用地部分については3分の1となります。
つまり、
親が住んでいた
↓
親が施設へ入居
↓
誰も住まなくなった
というだけで、直ちに住宅用地特例がなくなるとは限りません。
実家を適切に管理していることが重要です。
空き家だからすぐ「固定資産税6倍」ではない
ネット上では、
「空き家になると固定資産税が6倍になる」
という表現を見かけることがあります。
しかし、これはかなり省略された説明です。
空き家になっただけで即座に固定資産税が6倍になるわけではありません。
一方で、適切に管理されず、市区町村から「管理不全空家」や「特定空家」として勧告を受けると、その土地が住宅用地特例の対象から外れる可能性があります。
つまり問題になるのは、
「空き家であること」よりも「空き家を放置すること」
です。
【関連記事】空き家の税金が6倍になるのはいつから?固定資産税が上がる条件と回避策
【関連記事】特定空き家の事例|固定資産税が6倍になる典型パターンとは
親が施設に入っただけなら慌てて家を壊さない
「誰も住まないなら家を壊せばいいのでは?」
と考えることもあるでしょう。
しかし、固定資産税だけを理由に急いで解体するのはおすすめできません。
住宅を解体して更地にすると、土地が住宅用地ではなくなり、住宅用地特例を受けられなくなる可能性があります。
その結果、土地の固定資産税負担が増えるケースがあります。
もちろん建物の固定資産税はなくなりますので、
「解体すると必ず総額が上がる」
とも限りません。
建物の固定資産税額、土地の評価額、解体費用、今後の売却・活用方法などを合わせて判断する必要があります。
親が施設へ入った直後であれば、実家を売るのか残すのかも決まっていないことが多いでしょう。
その段階で急いで建物を解体する必要はありません。
実家を残すなら固定資産税以外にもお金がかかる
親が施設へ入った後、「固定資産税くらいなら払えるから実家は残しておこう」と考える家庭もあります。
ただ、実際にかかるのは固定資産税だけではありません。
たとえば、
- 都市計画税
- 火災保険
- 電気や水道の基本料金
- 庭木や雑草の管理
- 建物の修繕
- 空き家管理サービス
- 実家へ通う交通費
などがあります。
年間の固定資産税が10万円だったとしても、実家全体の維持費が年間10万円とは限りません。
そのため、
「固定資産税はいくら?」
だけではなく、
「実家を1年間残すために全部でいくら必要?」
と考えることが大切です。
【関連記事】空き家でも税金はかかる?意外と重い固定資産税と優遇制度を解説
固定資産税は親の老人ホーム費用と一緒に考える
親が施設へ入居すると、これまでの生活費とは別に施設利用料が必要になります。
その状態で実家を残せば、
老人ホームの費用+実家の維持費
を同時に負担することになります。
たとえば、
年金収入 年200万円
老人ホーム関係費 年180万円
実家の固定資産税 年10万円
その他の実家維持費 年10万円
という場合、年金だけではほとんど余裕がありません。
反対に、年金や預貯金で十分に施設費用を払えるのであれば、実家を急いで売却する必要はない場合もあります。
つまり、固定資産税単独で「実家を売る・残す」を決めるのではなく、親の資産全体から判断することが重要です。
【関連記事】介護費用はいくらかかる?実家を売る前に知っておくべき現実
固定資産税がもったいないから実家を売るべき?
固定資産税を払うのがもったいないからといって、すぐ売却する必要はありません。
特に老人ホームへ入居した直後は、
- 親が施設生活に馴染めるか分からない
- 自宅へ戻る可能性がある
- 家族で話し合いが終わっていない
- 荷物や仏壇が残っている
- 売却価格が分からない
といったことがあります。
一度実家を売れば簡単には元に戻せません。
一方で、誰も戻る予定がなく、固定資産税や管理費だけを何年も払い続けるのであれば、売却を検討する理由は強くなります。
大切なのは「固定資産税がかかるから売る」のではなく、
戻る可能性・維持費・施設費用・売却価格
をまとめて考えることです。
【関連記事】親が老人ホームに入ったら実家は売るべき?売らない方がいいケースも解説
実家を売らずに固定資産税分だけでも補う方法もある
親が施設へ入ったものの、
「まだ実家は売りたくない」
という家庭は少なくありません。
そんなとき、実家の条件によっては建物を残したまま、一部だけを活用できることがあります。
たとえば、親が車を使わなくなって空いている駐車スペースです。
月極駐車場として貸すほどではなくても、必要な日だけ貸せる駐車場シェアという方法があります。
月数千円程度でも収入があれば、固定資産税や実家の維持費の一部を補える可能性があります。
もちろん、すべての実家に向いているわけではありません。
駅、病院、学校、観光地、イベント会場などの近くで駐車需要があるかどうかによって収益性は変わります。
「家はまだ残したい。でも空いている場所は少し活用したい」という場合の選択肢として考えてみてもいいでしょう。
【関連記事】親が施設に入って実家が空き家に|売らずに駐車場だけ貸す方法
固定資産税を確認するなら納税通知書を見るのが一番早い
「実家の固定資産税って年間いくら?」
という場合は、まず親の固定資産税納税通知書を探してみましょう。
毎年送られてくる納税通知書には、土地や建物の評価額、課税標準額、税額などが記載されています。
実家を残すか売るか検討するときにも役立ちます。
親が元気なうちに、
- 固定資産税はいくらか
- どの口座から払っているか
- 納税通知書はどこに保管しているか
- 実家の名義は誰か
だけでも確認しておくと、施設入居後の手続きがかなり楽になります。
親が亡くなった後は誰が払う?
親が施設へ入居した段階では親が所有者でも、その後相続が発生すれば状況が変わります。
実家を相続した人が今後の固定資産税を負担していくことになります。
ただし、相続直後で遺産分割が終わっていない場合などは手続きが複雑になることがあります。
兄弟姉妹がいる家庭では、
「誰が実家を相続するのか」
「実家を売却するのか」
「固定資産税を誰が負担するのか」
をできるだけ早めに話し合っておくことが大切です。
施設入居をきっかけに、実家の名義だけでも確認しておくとよいでしょう。
よくある質問
Q. 親が老人ホームに入ったら固定資産税は安くなりますか?
基本的には、老人ホームへ入居したことだけを理由に固定資産税が安くなるわけではありません。
不動産を所有している限り、原則として固定資産税はかかります。
Q. 誰も住んでいない実家にも固定資産税はかかりますか?
かかります。
居住しているかどうかではなく、土地や建物を所有していることに対して課税されるためです。
Q. 子どもが実家の固定資産税を払わなければいけませんか?
親名義のままであれば、原則として納税義務者は親です。
ただし、実務上は家族が納付手続きを手伝ったり、立て替えたりするケースもあります。
Q. 空き家になったら固定資産税は6倍になりますか?
空き家になっただけですぐ6倍になるわけではありません。
ただし、適切に管理されず、管理不全空家や特定空家として自治体から勧告を受けると、住宅用地特例を受けられなくなる場合があります。
Q. 実家を解体すれば固定資産税は安くなりますか?
必ずしも安くなるとは限りません。
建物の固定資産税はなくなりますが、土地について住宅用地特例が適用されなくなる可能性があります。
解体費用も必要になるため、実家を今後どうするか決めてから判断した方がよいでしょう。
Q. 親が施設に入ったら固定資産税の支払い先を変更できますか?
自治体によって納税通知書の送付先変更などの手続きがあります。
実家が空き家になる場合は、納税通知書を見落とさないためにも市区町村へ確認しておくと安心です。
まとめ|施設入居だけでは固定資産税は変わらない
以上、親が施設に入った後の実家の固定資産税はどうなる?誰が払う?というお話でした。
親が老人ホームなどの施設へ入って実家が空き家になっても、固定資産税が自動的になくなったり、すぐ高くなったりするわけではありません。
実家が親名義なら、基本的にはこれまで通り親が納税義務者です。
また、空き家になっただけで住宅用地特例が直ちになくなるわけでもありません。
ただし、管理されていない状態が続けば、将来的に住宅用地特例の対象から外れる可能性があります。
大切なのは、
施設へ入ったから家をどうするか急いで決めることではなく、まず固定資産税と実家全体の維持費を把握することです。
そのうえで、親が戻る可能性や老人ホーム費用、家族の負担を考えながら、実家を残す・売る・貸す・活用するといった選択肢を検討していきましょう。
