土地活用として貸し倉庫やトランクルームを検討していると、「貸し倉庫を建てて人に貸せば、土地は貸家建付地として評価されるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。
結論からいうと、貸し倉庫だから貸家建付地にならないわけではありません。
重要なのは「住宅か倉庫か」という建物の用途だけではなく、土地・建物の所有関係や建物の貸し方などです。

貸し倉庫は貸家建付地に該当する?
貸し倉庫でも、条件によってはその敷地が貸家建付地として評価される可能性があります。
「貸家」という言葉から、
「アパートや戸建て住宅など、人が住む建物だけが対象なのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、貸家建付地かどうかを考えるうえで重要なのは、単純に建物が「住宅」か「倉庫」かという用途だけではありません。
国税庁では、貸家建付地について「貸家の敷地の用に供されている宅地」と説明しており、土地所有者が建築したアパートやビルなどを他人に貸している場合を例として挙げています。
つまり、貸家建付地の「貸家」は一般的な戸建ての貸家だけを意味するものではありません。
たとえば、自分が所有する土地に自分で建物を建て、その建物を第三者へ賃貸している場合、その敷地について貸家建付地として評価される可能性があります。
一方で、土地だけを事業者へ貸して事業者が倉庫を建てているケースなどでは、同じ「倉庫として使われている土地」であっても評価の考え方が異なります。
そのため、
「倉庫だから貸家建付地になる」
「倉庫だから貸家建付地にならない」
と建物用途だけで判断しないことが重要です。
貸家建付地とは?
貸家建付地とは、簡単にいうと、自分が所有している土地の上に貸家が建っており、その建物を他人へ貸している場合の土地です。
代表例は賃貸アパートです。
自分の土地に自分でアパートを建て、その部屋を入居者へ貸している状態をイメージすると分かりやすいでしょう。
自分だけで自由に使える土地とは異なり、賃貸している建物には借家人の権利があります。
土地所有者だからといって、自由に建物を取り壊したり、土地を好きなように利用したりできるわけではありません。
こうした利用上の制約を相続税などの財産評価にも反映させるのが、貸家建付地の考え方です。
貸家建付地になるかは「誰が建物を所有しているか」も重要
貸し倉庫を考えるときに、特に注意したいのが土地と建物の所有関係です。
たとえば、次の2つは一見すると同じ「倉庫による土地活用」に見えます。
| 土地の使い方 | 土地所有者 | 建物所有者 |
|---|---|---|
| 自分で倉庫を建てて貸す | 自分 | 自分 |
| 土地を倉庫事業者に貸す | 自分 | 倉庫事業者 |
しかし、この2つでは土地に設定される権利関係が異なります。
自分で建物を所有して、その建物を第三者へ賃貸しているのであれば、貸家建付地に該当するかを検討することになります。
一方、土地そのものを他人へ貸し、借りた人がその土地に建物を建てている場合は、「貸宅地」など別の評価方法を検討することになります。
したがって、
「現在、この土地には貸し倉庫が建っている」
という情報だけでは、相続税評価を判断できません。
- 誰が土地を所有しているのか。
- 誰が建物を所有しているのか。
- 誰が誰に何を貸しているのか。
こうした権利関係を整理する必要があります。
「住宅ではないから対象外」とは限らない
貸し倉庫について調べている方に、特に知っておいてほしいポイントです。
「貸家建付地」という名称から、
「人が住んでいる建物でなければ対象にならない」
と考えてしまいがちです。
しかし、国税庁が貸家建付地の例として示しているものには「アパートやビルなど」があります。
したがって、
「倉庫は住宅ではない」
↓
「住宅ではないから貸家ではない」
↓
「貸家建付地にはならない」
と単純に判断するのは適切ではありません。
重要なのは、その建物について借家権が生じるような賃貸関係にあるかなど、実際の権利関係です。
貸し倉庫やトランクルームでは契約形態や施設の形態もさまざまなので、個別の状況を確認する必要があります。
貸家建付地になると土地の評価額はどうなる?
貸家建付地は、自分だけで使用している土地と比べて利用上の制約があります。
そのため、相続税や贈与税の財産評価では一定の減額を考慮して評価します。
国税庁が示している貸家建付地の評価方法は、次のとおりです。
貸家建付地の価額
=自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合
ここで出てくるのが、
- 自用地としての価額
- 借地権割合
- 借家権割合
- 賃貸割合
です。
少し難しく見えますが、基本的な考え方はそれほど複雑ではありません。
「自分だけで自由に使える土地の価値」から、「借家人がいることによって自由に使えない部分」を差し引いて評価するイメージです。
貸家建付地の評価額を簡単な例で計算
分かりやすくするため、簡略化した例を見てみましょう。
自用地としての評価額が5,000万円の土地があり、
- 借地権割合:60%
- 借家権割合:30%
- 賃貸割合:100%
だったとします。
計算すると、
5,000万円-5,000万円×60%×30%×100%
となります。
減額される部分は、
5,000万円×0.6×0.3=900万円
です。
したがって、この条件での貸家建付地の評価額は、
5,000万円-900万円=4,100万円
となります。
自用地として5,000万円で評価される場合と比較すると、900万円評価額が低くなる計算です。
ただし、実際の相続税評価は土地の条件や権利関係などによって異なります。
「倉庫を建てて貸せば必ずこの割合で評価額が下がる」という意味ではありません。
空室がある場合はどうなる?
貸家建付地を考えるうえでは、「実際に貸しているか」という点も重要です。
たとえば、賃貸用の建物を建てたとしても、相続が発生した時点で誰にも貸していないからといって、自動的に貸家建付地になるわけではありません。
国税庁も、賃貸用に建築された家屋であっても、課税時期に現実に貸し付けられていない場合は、原則としてその敷地を自用地として評価するとしています。
ただし、継続して賃貸していた建物で入居者が退去した直後など、「一時的な空室」と認められる場合には、賃貸されていたものとして取り扱えるケースがあります。
貸し倉庫でも、
「倉庫を建てた」
だけではなく、
「実際にどのような状態で貸しているのか」
まで確認することが大切です。
貸し倉庫ならすべて同じ扱いになるわけではない
ここまでを整理すると、貸し倉庫と貸家建付地の関係は次のように考えると分かりやすいでしょう。
| ケース | 貸家建付地の考え方 |
|---|---|
| 自分の土地に自分で建物を建てて第三者へ賃貸 | 貸家建付地に該当するか検討 |
| 土地だけを事業者へ貸して事業者が倉庫を建築 | 貸宅地など別の評価を検討 |
| 自分で倉庫を建てたが自分で使用 | 原則として貸家建付地ではない |
| 賃貸用倉庫を建てたが実際には未賃貸 | 原則として自用地評価 |
| 継続的に賃貸していて一時的に空室 | 一定条件で賃貸中として扱われる場合あり |
この違いを理解しておくと、「貸し倉庫なら相続税対策になる」といった単純な情報に惑わされにくくなります。
特に注意したいのがトランクルームです。
トランクルームと一口にいっても、建物型、倉庫型、コンテナ型などさまざまな形態があります。
さらに、自分で施設を建てて利用者へ貸す方法もあれば、土地だけをトランクルーム会社へ貸す方法もあります。
同じ「トランクルームによる土地活用」でも、土地の評価方法まで同じとは限りません。
次は、貸し倉庫・屋内型トランクルーム・コンテナ型トランクルーム・土地貸しをケース別に分けて、貸家建付地との関係を詳しく見ていきます。
貸し倉庫はどんな場合に貸家建付地になる?
ここからは、貸し倉庫を使った土地活用をケース別に見ていきます。
ポイントになるのは、単に「土地の上に倉庫があるか」ではありません。
土地と建物を誰が所有しているのか、さらにその建物をどのような契約で貸しているのかによって、土地の評価方法が変わる可能性があります。
まずは代表的なケースを整理すると、次のようになります。
| 活用方法 | 土地 | 建物 | 基本的な考え方 |
|---|---|---|---|
| 自分で倉庫を建てて第三者へ貸す | 自分 | 自分 | 貸家建付地を検討 |
| 自分の倉庫を自分で使う | 自分 | 自分 | 原則として自用地 |
| 土地だけ倉庫事業者へ貸す | 自分 | 事業者 | 貸宅地などを検討 |
| 屋内型トランクルームを運営 | 自分 | 自分 | 契約・利用実態等によって判断 |
| コンテナを設置して区画貸し | 自分 | ケースによる | 建物性や契約内容等によって判断 |
| 更地を駐車場として貸す | 自分 | ― | 原則として自用地 |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
自分の土地に倉庫を建てて第三者へ貸す場合
まず分かりやすいのが、自分が所有している土地に自分で倉庫を建て、その倉庫を第三者へ賃貸するケースです。
たとえば、
「所有地に事業用倉庫を建築し、物流会社へ建物を賃貸する」
といった土地活用です。
この場合、土地所有者と建物所有者は同じですが、建物そのものは第三者へ貸しています。
こうしたケースでは、その敷地について貸家建付地として評価することを検討します。
重要なのは「倉庫だから対象外」と考えないことです。
貸家建付地という名称だけを見るとアパートや賃貸住宅を想像しやすいですが、建物の用途だけで判断するものではありません。
自分の倉庫を自分で使っている場合
一方、自分の土地に倉庫を建てていても、自分自身がその倉庫を使用しているのであれば話は別です。
たとえば、
- 自社商品の保管倉庫
- 自分が経営する店舗の在庫置場
- 農機具などを保管する倉庫
- 自分の事業で使用する資材倉庫
などです。
建物を第三者へ貸しているわけではないため、「倉庫が建っている」というだけで貸家建付地になるわけではありません。
同じ外観の倉庫でも、
自分で使っているのか、第三者へ貸しているのか
によって考え方が変わるわけです。
土地だけを倉庫事業者へ貸す場合
土地活用では、自分で建物を建てず、事業者へ土地だけを貸す方法もあります。
たとえば、
土地所有者
↓
事業者へ土地を賃貸
↓
事業者が倉庫を建築
↓
事業者が倉庫を使用・運営
というケースです。
この場合、土地所有者が自分の建物を第三者へ貸しているわけではありません。
土地そのものを貸しています。
そのため、自分で所有する貸家の敷地として評価する貸家建付地とは異なり、借地権などの権利関係に応じて「貸宅地」などとして評価することを検討します。
ここは土地活用を検討する際にも重要な違いです。
建物を建てて貸す
土地と建物を自分で所有します。
建築費は基本的に自分で負担するため初期投資は大きくなりますが、建物から賃料収入を得る土地活用です。
土地だけを貸す
建物を事業者側が建てる契約であれば、土地所有者の初期投資を抑えやすくなります。
その代わり、土地所有者が受け取るのは基本的に土地の賃料です。
この2つは収益構造だけでなく、相続時の土地評価についても同じではありません。
「倉庫を使った土地活用」という言葉だけで比較せず、土地と建物の所有関係まで確認することが大切です。
トランクルームは貸家建付地になる?
貸し倉庫以上に判断が分かりにくいのがトランクルームです。
「倉庫を小さく区切って利用者に貸しているのだから、貸家建付地になるのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、トランクルームはすべて同じ仕組みで運営されているわけではありません。
たとえば、
- 建物内の区画を貸す屋内型
- 倉庫業者が荷物を預かるタイプ
- 屋外にコンテナを設置するタイプ
- 土地だけを運営会社へ貸すタイプ
などがあります。
さらに、契約についても「建物の賃貸借」なのか「収納スペースを利用する契約」なのかなど違いがあります。
そのため、
トランクルーム=貸家建付地
と一律に判断することはできません。
屋内型トランクルームの場合
ビルや専用建物の内部を小さな収納スペースに区切って貸し出すのが、一般的な屋内型トランクルームです。
一見すると、
「自分の建物を利用者に貸しているのだから貸家建付地では?」
と思えます。
しかし、ここでも実際の契約内容や利用形態の確認が必要です。
一般的な賃貸住宅では、借主が部屋そのものを借り、占有して使用します。
一方、トランクルームでは事業者によってサービス内容が異なり、単純な建物賃貸とは異なる契約形態が採用されている場合があります。
そのため、
「建物の中に収納区画を作った」
という事実だけで土地が貸家建付地になると判断するのは避けた方がよいでしょう。
相続税対策を目的としてトランクルームを検討している場合は、運営会社の説明だけで判断せず、契約書や運営形態を税理士などの専門家に確認してもらうことをおすすめします。
コンテナ型トランクルームの場合はさらに注意
土地の上にコンテナを並べて収納スペースとして貸し出す「コンテナ型トランクルーム」もあります。
このタイプは、屋内型以上に注意が必要です。
理由は、設置されているコンテナが建築基準法上の建築物に該当するかなど、施設の状態によって前提条件が変わる可能性があるからです。
単に、
「コンテナを土地に置く」
↓
「利用者へ貸す」
↓
「貸家建付地になる」
とは考えない方がよいでしょう。
固定して継続的に使用するコンテナについては建築物として扱われる場合があり、建築確認や用途地域など別の問題も関係してきます。
コンテナ型トランクルームを土地活用として検討するときは、相続税評価だけでなく、
- 建築物に該当するか
- 建築確認が必要か
- 用途地域上設置できるか
- 接道などの条件を満たしているか
- どのような契約で利用者へ貸すのか
といった点まで確認する必要があります。
運営会社へ土地だけ貸すトランクルームは別に考える
トランクルーム経営には、土地所有者自身が施設を建設・運営する方法だけでなく、トランクルーム会社などへ土地を貸す方式もあります。
たとえば、
土地所有者
↓
運営会社へ土地を貸す
↓
運営会社が施設を設置
↓
運営会社が利用者を募集
という仕組みです。
この場合、土地所有者自身が利用者へ建物を貸しているわけではありません。
土地所有者から見ると、基本的には「土地を事業者へ貸している」という関係です。
したがって、
トランクルームがある土地=貸家建付地
とは限りません。
貸し倉庫と同じように、「誰が土地を持っているか」「誰が施設を持っているか」「誰に何を貸しているか」を整理することが重要です。
貸し倉庫とトランクルームの違い
ここまでの違いを簡単に整理してみましょう。
| 項目 | 一棟貸し倉庫 | 屋内型トランクルーム | コンテナ型 |
|---|---|---|---|
| 主な利用方法 | 倉庫を一棟または一定範囲で貸す | 建物内の収納スペースを利用 | コンテナ内を収納スペースとして利用 |
| 利用者 | 法人・個人 | 主に個人・法人 | 主に個人・法人 |
| 建物 | 通常あり | あり | 状況による |
| 契約 | 建物賃貸借など | サービスにより異なる | サービスにより異なる |
| 貸家建付地 | 該当する場合あり | 個別判断 | 個別判断 |
| 判断ポイント | 建物の所有・賃貸関係 | 契約・利用実態 | 建物性・契約・利用実態 |
特に相続税対策として土地活用を検討している場合、表面上の土地活用方法だけを比較しないことが重要です。
「アパートなら○」
「倉庫なら○」
「トランクルームなら×」
というほど単純ではありません。
駐車場は貸家建付地になる?
倉庫やトランクルームと比較されることが多い土地活用として、駐車場があります。
月極駐車場やコインパーキングとして土地を貸していても、一般的には土地所有者が自ら駐車場設備を設置して利用させているだけであれば、貸家建付地とはなりません。
貸家建付地は、借家権の目的となっている建物の敷地についての評価だからです。
これは、akippaなどの駐車場シェアを利用する場合についても基本的な方向性は同じです。
自宅の空き駐車スペースなどを時間単位・日単位で貸したからといって、その土地が貸家建付地になるわけではありません。
ただし、ここには土地活用として別のメリットがあります。
建物を建てる必要がないため、貸し倉庫やアパートなどと比べて初期投資を大幅に抑えて始められることです。
つまり、
貸家建付地による評価減を狙う土地活用
と、
ほとんど初期投資をせず、余っているスペースから収益を得る土地活用
は、そもそも目的が違います。
土地活用を考えるときは、相続税評価だけでなく、建築費、収益性、管理負担、将来その土地を別用途に使いやすいかまで含めて比較する必要があります。
次は、貸家建付地によって土地の評価額がどの程度変わるのかを確認しながら、アパート・貸し倉庫・トランクルーム・駐車場を土地活用として比較していきます。
貸家建付地なら相続税対策になる?
貸家建付地として評価される土地は、自分で自由に使える土地と比べて相続税評価額が低くなる可能性があります。
そのため、アパートや貸し倉庫などの土地活用が相続税対策として検討されることがあります。
ただし、
「評価額が下がる=その土地活用がお得」
とは限りません。
土地活用では、相続税評価だけでなく、建築費や収益性、空室リスク、維持管理費、将来の使いやすさまで含めて考えることが重要です。
貸家建付地の評価減は土地によって違う
貸家建付地の評価額は、次の計算式で求めます。
自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合
たとえば、同じ5,000万円の土地でも、借地権割合や賃貸割合などが異なれば評価額も変わります。
そのため、
「賃貸物件を建てれば土地評価が○%下がる」
と一律にはいえません。
また、相続税は土地だけで決まるものではありません。
預貯金、有価証券、建物など他の財産や債務、適用できる特例なども含めて計算します。
相続税対策を主目的として大きな投資をする場合は、土地活用会社の収支シミュレーションだけでなく、税理士などへ相談して相続全体で確認することをおすすめします。
小規模宅地等の特例とは別に考える
貸家建付地について調べていると、「小規模宅地等の特例」という言葉もよく出てきます。
混同しやすいのですが、
貸家建付地の評価と小規模宅地等の特例は別の仕組みです。
貸家建付地は、土地に借家人などの権利が存在することを考慮して土地そのものを評価する考え方です。
一方、小規模宅地等の特例は、相続した一定の宅地について要件を満たした場合に、相続税の課税価格へ算入する価額を減額できる制度です。
賃貸事業などに使われていた土地については「貸付事業用宅地等」に該当する可能性があります。
ただし、対象面積や事業の継続、取得者などについて要件があります。
さらに、相続開始前3年以内に新たに貸付事業に使い始めた宅地については、一定の場合を除き対象外となるなど注意点もあります。
したがって、
「相続が近そうだから、とりあえず土地活用を始めれば大幅に節税できる」
という単純なものではありません。
土地活用を相続税対策として検討するときは、
「貸家建付地としてどう評価されるか」
「小規模宅地等の特例を適用できるか」
を分けて確認した方が分かりやすいでしょう。
相続税対策だけで土地活用を決めない
ここは土地活用を検討するうえで非常に重要です。
土地活用会社から、
「アパートを建てると相続税対策になります」
「賃貸物件を建てると土地評価を下げられます」
といった提案を受けることがあります。
実際に評価額が下がるケースはありますが、税金だけを理由に数千万円規模の建物を建てるのは慎重に判断したいところです。
たとえば5,000万円をかけて賃貸物件を建てたとしても、その後、
- 入居者が集まらない
- 想定より家賃を下げることになった
- 修繕費が増えた
- 借入金の返済が重い
- 売却しにくくなった
- 相続した子どもが経営を続けたくない
といった問題が起これば、評価額を下げられたとしても土地活用そのものが成功したとはいえません。
大切なのは、
「どれだけ相続税評価が下がるか」ではなく「税金を含めて最終的にどれだけ資産を残せるか」
という視点です。
アパート・貸し倉庫・トランクルーム・駐車場を比較
土地活用にはさまざまな方法があります。
代表的な方法を大まかに比較すると、次のようになります。
| 土地活用 | 初期投資 | 収益性 | 管理負担 | 撤退・転用 | 貸家建付地 |
|---|---|---|---|---|---|
| アパート・賃貸住宅 | 大きい | 高め | 大きめ | しにくい | 対象になり得る |
| 貸し倉庫 | 中〜大 | 中程度 | 中程度 | しにくい | 対象になり得る |
| 屋内型トランクルーム | 中〜大 | 中程度 | 中程度 | 条件による | 個別判断 |
| 月極駐車場 | 小さい | 低〜中 | 小さい | しやすい | 原則対象外 |
| コインパーキング | 小〜中 | 立地による | 比較的小さい | 比較的しやすい | 原則対象外 |
| 駐車場シェア | 非常に小さい | 小さい | 小さい | しやすい | 原則対象外 |
※実際の投資額や収益性、税務上の取り扱いは土地の条件、契約形態、運営方式などによって異なります。
この表からも分かるように、すべての土地活用に同じメリットがあるわけではありません。
何を優先するかによって向いている方法が変わります。
収益性を求めるなら建物を建てる土地活用も選択肢
駅に近い土地や住宅需要の高い地域などでは、アパートや賃貸住宅を建てることで長期的な賃料収入を期待できます。
物流需要がある地域や幹線道路沿いなどでは、貸し倉庫が適しているケースもあるでしょう。
建物を建てる土地活用のメリットは、土地だけを貸すより高い収益を狙いやすいことです。
一方で、建築費という大きな初期投資が必要になります。
建物は完成したら終わりではありません。
修繕、設備更新、募集、管理なども長期間続きます。
そのため、将来の需要まで含めて事業性を判断する必要があります。
貸し倉庫は住宅に向かない土地でも検討できる
貸し倉庫のメリットのひとつは、アパートなどの住宅系土地活用とは異なる需要を狙えることです。
たとえば、
- 住宅地としての需要がそれほど高くない
- 工場や事業所が多い
- 幹線道路からアクセスしやすい
- 物流施設や事業者が多い
- 住宅には使いにくい土地形状
などでは、倉庫系の活用が検討できる場合があります。
ただし、倉庫ならどこでも需要があるわけではありません。
土地の広さ、接道、用途地域、周辺需要、車両の出入りなどを確認する必要があります。
相続税評価だけを理由に建てるのではなく、
「この場所に倉庫を借りたい人が本当にいるのか」
を先に確認することが大切です。
小さな土地ならトランクルームという方法もある
一棟貸しの倉庫を建てるほど土地が大きくない場合、トランクルームを検討する方法もあります。
住宅の収納不足がある地域などでは、比較的小さなスペースにも需要が見込める可能性があります。
一方、トランクルームは運営方式によって事業内容が大きく変わります。
自分で建物を建てて運営する方法もあれば、運営会社へ一括で任せる方法、土地だけを貸す方法などがあります。
収益だけを比較するのではなく、
- 誰が建物を建てるのか
- 建築費を誰が負担するのか
- 集客を誰がするのか
- 空室リスクを誰が負うのか
- 修繕費を誰が負担するのか
- 契約終了後に何が残るのか
まで確認しておきましょう。
これらは収益性だけでなく、土地の相続税評価を考えるうえでも重要になります。
建物を建てない方がいい土地もある
土地を所有していると、
「何か建てないともったいない」
と思ってしまうかもしれません。
しかし、必ずしも建物を建てることが正解とは限りません。
たとえば、
- 数年後に売却する可能性がある
- 子どもが将来使う可能性がある
- 建築費を大きくかけたくない
- 借入をしたくない
- 周辺の賃貸需要が弱い
- 土地の一部しか余っていない
といった場合です。
こうした土地では、建物を建てずに利用する方法も検討できます。
代表的なのが月極駐車場やコインパーキングです。
さらに最近では、自宅や所有地の空いている駐車スペースを必要な時間だけ貸し出す「駐車場シェア」という方法もあります。
土地活用は「大きく稼ぐ」だけではない
アパートや貸し倉庫のような土地活用と、駐車場シェアでは事業規模がまったく違います。
駐車場シェアは、アパート経営のように大きな家賃収入を狙う土地活用ではありません。
その代わり、
「今は使っていないスペースから少しでも収入を得る」
という使い方ができます。
たとえば、自宅に車2台分のスペースがあるものの普段は1台しか使っていない場合。
イベント開催日だけ需要がある土地。
建物を建てる予定はないものの、しばらく使う予定もない土地。
こうした場所なら、大きな設備投資をする前に小さく活用してみるという考え方もあります。
相続税評価を下げることを目的とした土地活用ではありませんが、
初期投資をできるだけかけず、遊んでいるスペースを収益化する
という別のメリットがあります。
土地活用は目的を先に決める
土地活用を比較するときは、最初に「何のために活用するのか」を決めておくと選びやすくなります。
相続税対策を重視する。
毎月の収益を重視する。
初期投資を抑える。
管理の手間を減らす。
数年後に別用途へ転用できるようにする。
空いている場所から少しだけ収入を得る。
目的によって選ぶべき土地活用は変わります。
貸家建付地として評価されることにはメリットがありますが、それだけで貸し倉庫やアパートを選ぶ必要はありません。
特に、
「建物を建てるほどではないけれど、空いている場所をそのままにしておくのはもったいない」
という方なら、もっと小さな土地活用から始める方法もあります。
次は、こうした空きスペースを活用できる駐車場シェアについて、一般的な駐車場経営との違いや向いている土地を見ていきます。
建物を建てずに空きスペースを活用する方法もある
ここまで、貸し倉庫やトランクルームと貸家建付地の関係を見てきました。
相続税対策まで考えるのであれば、土地の評価方法は重要です。
一方で、すべての土地所有者がアパートや貸し倉庫を建てるほど大掛かりな土地活用を必要としているわけではありません。
「自宅の駐車場が1台分余っている」
「所有地の一部だけ使っていない」
「将来使う予定があるので建物は建てたくない」
という場合は、建築を伴わない小さな土地活用も選択肢になります。
そのひとつが駐車場シェアです。
駐車場シェアとは?
駐車場シェアとは、自宅や所有地などの空いている駐車スペースを、車を停めたい人へ一時的に貸し出す仕組みです。
月極駐車場のように1か月単位で貸すのではなく、サービスを通して日単位などで貸し出せるのが特徴です。
代表的なサービスのひとつにakippaがあります。
駐車場を借りたい人はサービス上から利用できる駐車場を探して予約し、土地所有者側は使っていない駐車スペースを登録して収益化します。
大規模な土地活用というより、
「今ある空きスペースを使って、小さく収益化する方法」
と考えると分かりやすいでしょう。
駐車場シェアが向いているのはこんな土地
駐車場シェアは、どこでも大きな収益を得られる土地活用ではありません。
周辺に駐車需要があることが重要です。
たとえば、次のような場所では検討する価値があります。
- 駅の周辺
- 商業施設の周辺
- 観光地の周辺
- スタジアムやイベント会場の周辺
- 病院の周辺
- 学校や大学の周辺
- コインパーキングが少ない住宅地
- 月極駐車場が不足している地域
一方、周辺に無料駐車場が多かったり、そもそも車で訪れる人が少なかったりする地域では、登録しても利用されない可能性があります。
まずは「この場所に車を停めたい人がいるか」という需要を見ることが重要です。
駐車場シェアは大儲けする土地活用ではない
駐車場シェアを検討するときに理解しておきたいのが、アパート経営や貸し倉庫経営とは事業規模が違うことです。
1台分の駐車スペースを貸しただけで、毎月何万円もの安定収入が得られるとは限りません。
場所によっては、ほとんど予約が入らない可能性もあります。
その代わり、大きな建築費をかけずに始められるのがメリットです。
アパートや貸し倉庫の場合、
「本当に入居者が集まるだろうか」
「何千万円も借り入れて大丈夫だろうか」
という大きな事業判断が必要になります。
駐車場シェアなら、すでに駐車できるスペースがあれば、その場所を活用できる可能性があります。
土地活用というより、
「使っていない場所から少し収入が入ればいい」
くらいの考え方と相性のよい方法です。
【関連記事】
駐車場シェアは大儲けする土地活用ではない。それでも人気の理由とは?
貸し倉庫と駐車場シェアは目的がまったく違う
貸し倉庫と駐車場シェアのどちらが優れている、というものではありません。
目的が大きく異なるからです。
| 比較 | 貸し倉庫 | 駐車場シェア |
|---|---|---|
| 初期投資 | 大きい | 小さい |
| 建物 | 必要 | 原則不要 |
| 期待収益 | 比較的大きい | 小さい |
| 管理 | 必要 | 比較的少ない |
| 長期契約 | 多い | 基本的になし |
| 土地の転用 | しにくい | しやすい |
| 貸家建付地 | 条件により対象 | 原則対象外 |
| 向いている人 | 本格的に土地活用したい | 空きスペースを活用したい |
相続税対策や長期的な賃料収入を目的としているなら、貸し倉庫やアパートなどを含めて検討する必要があります。
一方、
「土地の一部分だけ余っている」
「自宅の駐車スペースを使わない日がある」
という程度なら、建物を建ててまで土地活用する必要はありません。
土地の状況と目的に合わせて、活用方法の規模を選ぶことが大切です。
空いている駐車スペースがあるならakippaという選択肢
すでに車を停められるスペースが余っているなら、akippaのような駐車場シェアサービスへ登録して貸し出す方法があります。
たとえば、
「平日の昼間は家族が車で出勤している」
「自宅に2台分あるけれど1台分しか使っていない」
「所有している土地に数台分の空きスペースがある」
といったケースです。
こうしたスペースのためだけにアパートや貸し倉庫を建てるのは現実的ではありません。
しかし、駐車場として需要がある場所なら、空いている時間だけ貸すという使い方ができます。
もちろん、登録したからといって必ず予約が入るわけではありません。
周辺需要や駐車のしやすさなどによって利用状況は変わります。
そのため、
「本格的な土地活用を始める」というより、「今ある空きスペースを活用できるか試してみる」
という感覚で検討する方法のひとつです。
駐車場シェアの仕組みやメリット・デメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
【関連記事】
駐車場シェアは大儲けする土地活用ではない。それでも人気の理由とは?
貸家建付地と土地活用についてよくある質問
Q. 貸し倉庫はすべて貸家建付地になりますか?
いいえ。
貸し倉庫があるというだけで、その土地が必ず貸家建付地になるわけではありません。
土地・建物の所有者や賃貸関係などを確認して判断する必要があります。
特に、自分が所有する建物を第三者へ貸している場合と、土地だけを事業者へ貸している場合では、土地評価の考え方が異なります。
Q. 倉庫は住宅ではありませんが貸家建付地になることがありますか?
あります。
「貸家」という名称から住宅だけを想像しやすいのですが、住宅か倉庫かという用途だけで判断するものではありません。
誰が建物を所有し、どのような権利関係で第三者へ貸しているのかが重要です。
Q. トランクルームは貸家建付地になりますか?
一律には判断できません。
屋内型トランクルーム、コンテナ型、土地だけを運営会社へ貸す方式などがあり、施設の形態や所有関係、契約内容などが異なるためです。
相続税対策としてトランクルームを検討する場合は、具体的な事業方式を決めたうえで税理士などへ確認することをおすすめします。
Q. 土地にコンテナを置けば貸家建付地になりますか?
コンテナを設置しただけで貸家建付地になるとは限りません。
コンテナの設置状態や建物としての取り扱い、所有関係、利用者との契約内容などを確認する必要があります。
また、コンテナを継続的に設置して使用する場合には、建築基準法上の取り扱いなどにも注意が必要です。
Q. 月極駐車場は貸家建付地になりますか?
一般的な青空月極駐車場は、貸家建付地には該当しません。
土地を駐車場所として利用させているのであって、借家権の目的となる建物の敷地ではないためです。
ただし、駐車場の運営形態や土地の貸し方によって権利関係が異なるケースもあるため、個別の判断が必要な場合があります。
Q. akippaで自宅駐車場を貸すと貸家建付地になりますか?
通常、自宅の空き駐車スペースを駐車場シェアとして貸しただけで、その土地が貸家建付地になるわけではありません。
駐車場シェアは、貸家建付地による評価減を目的とした土地活用とは分けて考えた方がよいでしょう。
メリットは、相続税評価を下げることではなく、今ある空きスペースを大きな初期投資なしで活用できることです。
Q. 相続税対策ならアパートと貸し倉庫のどちらが有利ですか?
一概にはいえません。
土地の評価だけでなく、建築費、借入金、家賃収入、空室率、修繕費、将来の需要などが異なるためです。
アパート需要が弱い土地なら、相続税評価を下げられたとしても経営で苦労する可能性があります。
逆に、倉庫需要がほとんどない地域に貸し倉庫を建てても安定した収益は期待できません。
「節税効果が大きい方」ではなく、「その土地で長期的に事業として成立するか」を重視して比較することが大切です。
まとめ|貸し倉庫の貸家建付地判定は「住宅かどうか」だけで決まらない
以上、貸し倉庫は貸家建付地になる?トランクルームとの違い・相続税評価を解説...というお話でした。
貸し倉庫と貸家建付地について重要なポイントを整理すると、次のとおりです。
- 貸し倉庫でも貸家建付地に該当する可能性がある
- 「住宅ではないから対象外」とは限らない
- 土地と建物の所有関係が重要
- 土地だけを事業者へ貸す場合は別の評価を検討する
- トランクルームは施設や契約の形態によって個別判断が必要
- 貸家建付地では一定の評価減が反映される
- 駐車場シェアは原則として貸家建付地を狙う土地活用ではない
- 相続税だけでなく初期投資や収益性まで比較することが大切
相続税評価を下げられることは、土地活用を考えるうえでひとつのメリットです。
しかし、評価額を下げるためだけに需要のないアパートや倉庫を建ててしまっては本末転倒です。
本格的に収益を得たいのであれば、周辺需要を調べたうえでアパートや貸し倉庫、トランクルームなどを比較する。
一方、建物を建てるほどではなく、自宅や所有地に使っていない駐車スペースがあるのであれば、駐車場シェアのような小さな土地活用から考えてみる。
土地の立地や広さだけでなく、
「その土地を何のために活用したいのか」
を明確にしたうえで、自分に合った方法を選ぶことが大切です。
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