
親から土地を相続して登記を確認したら、「市街化調整区域」と書かれていて戸惑う方もいるでしょう。
市街化調整区域では建築や開発に制限があるため、一般的な宅地と同じ感覚で「家を建てる」「アパート経営をする」と決めるのは注意が必要です。
結論からいうと、まず土地の条件を確認し、そのうえで保有・土地活用・賃貸・売却を比較するのがおすすめです。
結論|相続したら最初に「何ができる土地か」を確認する
市街化調整区域の土地を相続したときに、いきなり、
アパートを建てよう
駐車場にしよう
安くてもいいから売ろう
と決める必要はありません。
最初にやることは、
その土地で何ができるのかを確認すること
です。
おすすめの順番は次のとおりです。
市街化区域・市街化調整区域を確認
↓
地目と現況を確認
↓
建物・許可履歴を確認
↓
農地など別の規制を確認
↓
接道・インフラを確認
↓
周辺需要を確認
↓
保有・活用・賃貸・売却を比較
市街化調整区域でも条件によっては住宅を建てられる土地があります。
一方で、建築が難しくても駐車場や資材置場、農地として利用できる可能性があります。
そのため、
市街化調整区域=使えない土地
と決めつけないことが大切です。
市街化調整区域とは?
市街化調整区域とは、市街地が無秩序に広がるのを抑えるため、原則として市街化を抑制する区域です。
市街化区域と比較すると、住宅やアパート、店舗などの新築について強い制限があります。
ただし、
市街化調整区域では何も建てられない
という意味ではありません。
土地の条件や過去の許可、自治体の条例・開発許可基準などによっては建築できるケースもあります。
市街化区域との基本的な違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
【関連記事】市街化区域と市街化調整区域の違いは?建築・土地活用までわかりやすく解説
相続した市街化調整区域の土地で最初に確認したい7つのこと
相続した土地については、最低でも次の7項目を確認しておきましょう。
1. 本当に市街化調整区域なのか
まず確認するのが区域区分です。
自治体によっては、
都市計画図
都市計画情報マップ
GIS
などをインターネット上で公開しています。
住所や地図から確認できる場合がありますが、土地活用や売却など重要な判断をするときは、自治体の担当窓口でも確認しましょう。
また、すべての土地が、
市街化区域
または
市街化調整区域
のどちらかに分かれているわけではありません。
非線引き都市計画区域や都市計画区域外の土地もあるため、まず区域を正確に確認することが第一歩です。
2. 登記上の地目と現在の使われ方
次に確認したいのが地目です。
登記簿には、
宅地
田
畑
山林
雑種地
などの地目が記載されています。
ただし、登記上の地目と現在の利用状況が一致しているとは限りません。
たとえば、
登記上は田だが長期間使われていない
宅地になっているが古家が残っている
雑種地として資材置場に使われている
といったケースがあります。
土地活用を考えるときは、
登記上どうなっているか
と
現地で実際にどう使われているか
の両方を確認しましょう。
3. 建物があるなら建築された経緯を確認する
相続した土地に住宅や倉庫などが建っている場合は、
建物があるから今後も同じように建築できる
とは限りません。
市街化調整区域では、建物がどのような許可や経緯によって建築されたのかが重要になることがあります。
確認したいのは、
建築時期
建物用途
過去の開発許可
建築に関する許可
将来の建替え条件
などです。
特に古い実家を相続した場合、
「いずれ壊して新築すればいい」
と考える前に、建替えできる土地なのか確認しておきましょう。
【関連記事】市街化調整区域でも家は建てられる?建築できるケースと注意点
4. 農地なら農地法の確認も必要
市街化調整区域には田や畑も多くあります。
農地を相続した場合は、都市計画法だけでなく農地法も関係します。
たとえば、
駐車場にする
資材置場にする
住宅敷地にする
といった場合には、農地転用の許可などが必要になることがあります。
特に市街化調整区域の農地は、農地の種類や場所によって転用が難しい場合があります。
そのため、
使っていない田畑だから、とりあえず砂利を敷いて駐車場にする
といった自己判断は避けましょう。
【関連記事】農地転用とは?農地を駐車場や宅地として活用するときの注意点
5. 接道条件を確認する
住宅などの建築を考える場合は、道路との関係も重要です。
土地が道に面しているように見えても、その道が建築基準法上の道路として扱われるとは限りません。
特に、
古くからある集落
農地の中の土地
細い道路しかない土地
などでは注意が必要です。
接道条件を満たしていない場合、住宅用地としての利用が難しくなり、売却価格や買い手の範囲にも影響する可能性があります。
6. 上下水道などのインフラを確認する
市街化調整区域では、市街化区域と比べて上下水道などが十分に整備されていない土地もあります。
たとえば住宅を建てる場合、
上水道を引き込めるか
公共下水道があるか
浄化槽が必要か
電気を引き込めるか
などの確認が必要です。
土地自体は安くても、インフラ整備に大きな費用が必要になる場合があります。
これは自分で活用するときだけでなく、将来売却するときにも重要な情報です。
7. 固定資産税と年間の維持費を確認する
土地を相続すると、使っていなくても維持費がかかります。
主な負担として、
固定資産税
草刈り
樹木管理
現地確認の交通費
不法投棄対策
などがあります。
特に遠方の土地では、
土地から収入はないのに、毎年管理費だけかかる
状態になることがあります。
そこで、固定資産税の納税通知書などを確認し、
年間いくら持ち出している土地なのか
を把握しておきましょう。
相続した土地をそのまま持ち続ける選択肢
市街化調整区域だからといって、すぐ活用・売却しなければならないわけではありません。
将来、
自分や家族が使う予定がある
隣接地も含めて活用を考えている
現在は売却条件がよくない
といった場合は、保有を続ける選択肢もあります。
ただし、
何となく相続したまま放置
するのはおすすめできません。
保有を続けるなら、
年間維持費
誰が管理するか
将来いつ見直すか
を家族で決めておくとよいでしょう。
土地活用するなら「建てる」ことから考えない
相続した土地を見ると、
せっかく土地があるのだから何か建てよう
と考えがちです。
しかし、市街化調整区域ではその順番を逆にした方が安全です。
まず、
法的にできることを確認
↓
周辺需要を確認
↓
採算を確認
します。
土地の条件によっては、
月極駐車場
駐車場シェア
資材置場
農地として貸す
事業者への貸地
など、建物を建てない土地活用の方が現実的な場合があります。
【関連記事】市街化調整区域でもできる土地活用7選|駐車場・資材置場・農地活用を比較
駐車場として使える土地なら小さく活用する方法もある
すでに適法に駐車スペースとして利用されている土地なら、月極駐車場や駐車場シェアを検討できる場合があります。
特に、
1~2台分だけ空いている
実家の駐車スペースが余っている
イベント開催時だけ需要がある
といったケースでは、大きな設備投資をせず小さく始められる可能性があります。
特Pなどの駐車場シェアで、空いている日時だけ貸す方法もあります。
ただし、農地をそのまま駐車場へ変更するなど、必要な手続きをせず利用することは避けましょう。
【関連記事】特Pで自宅駐車場を貸す完全ガイド|登録・収入・トラブルまで解説
売却する場合は「市街化調整区域だから安い」と決めつけない
相続した土地を自分で使う予定がない場合は、売却も有力な選択肢です。
ただし、
市街化調整区域だからほとんど価値がない
建物を建てにくいから売れない
と最初から決めつける必要はありません。
同じ市街化調整区域でも、
住宅を建てられる
既存住宅の建替えが可能
幹線道路に面している
資材置場として需要がある
農地として利用価値がある
など、土地によって条件は大きく異なります。
売却を考えるなら、まずその土地で何ができるのかを整理し、そのうえで査定を受ける方がよいでしょう。
【関連記事】市街化調整区域の土地は売れる?売却しにくい理由と相続後の対処法
売却と土地活用は数字で比較する
市街化調整区域の土地を相続したときは、
売った方がいいのか
持ち続けて活用した方がいいのか
を感覚だけで決めないことが大切です。
たとえば、
固定資産税
草刈り費用
管理費
交通費
活用する場合の初期投資
想定収入
売却できる価格
を並べると判断しやすくなります。
仮に土地活用で毎年収入が入っても、造成や設備投資に大きな費用がかかれば、回収まで長期間かかる場合があります。
一方で、現在の状態をほとんど変えずに貸せる土地なら、保有しながら一定の収入を得る選択肢もあります。
重要なのは、
土地を持っているから何か始める
のではなく、
その土地を持ち続けるメリットがあるか
を考えることです。
市街化調整区域の土地を売却するなら複数社へ査定する
市街化調整区域では、不動産会社によって査定額や売却方針に差が出ることがあります。
その理由は、
建築可能性の見方
地域での取引経験
想定している買主
農地・事業用地の取扱経験
などが会社によって違うためです。
1社から、
「この土地は市街化調整区域なのでほとんど売れません」
と言われても、それだけで判断しない方がよいでしょう。
複数社へ相談し、
査定価格
その価格になった理由
どのような買主を想定しているか
仲介で売るのか買取を検討するのか
まで比較すると分かりやすくなります。
仲介と買取はどちらがいい?
土地の売却方法には、大きく分けて仲介と買取があります。
仲介
不動産会社に買主を探してもらう方法です。
市場価格に近い価格で売却できる可能性がある一方で、市街化調整区域では買主が限定され、売却まで時間がかかる場合があります。
買取
不動産会社などに直接買い取ってもらう方法です。
仲介より売却価格が低くなる傾向がありますが、
早く処分したい
遠方で管理が大変
買主探しを長く待ちたくない
といった場合には比較する価値があります。
ただし、市街化調整区域ならどの土地でも買い取ってもらえるわけではありません。
土地の条件によって買取可否は異なります。
「売れない」と言われても理由を確認する
市街化調整区域の土地を査定した際、
「この土地は売りにくいです」
と言われることがあります。
その場合は、
なぜ売りにくいのか
を確認しましょう。
原因が、
住宅を建てられない
農地転用が難しい
接道条件が悪い
上下水道がない
土地の形が使いにくい
周辺需要が弱い
のどれなのかによって、対応は変わります。
たとえば住宅用地としては難しくても、
資材置場
駐車場
農地
隣地所有者による購入
など別の需要がある場合があります。
つまり、
住宅用地として売りにくい
と
誰にも売れない
は同じではありません。
隣地所有者が買い手になることもある
市街化調整区域の土地では、一般の購入希望者だけでなく隣地所有者も買い手候補になることがあります。
たとえば、
農地をまとめたい
土地を広げたい
進入路を確保したい
資材置場を拡張したい
といった事情です。
市場では使い道が限られる土地でも、隣地所有者にとっては価値があることがあります。
ただし、隣地へ直接売却する場合でも、
境界
価格
農地法などの手続き
は確認しておきましょう。
相続した土地は名義の整理も必要
土地を売却する場合は、相続関係の整理も必要です。
相続した土地が亡くなった親名義のままなら、通常は相続登記などを行って名義関係を整理してから売却手続きを進めます。
また、複数人で相続する場合も注意が必要です。
相続したからといって、必ず共有名義になるわけではありませんが、共有となった場合は土地全体を売却するときに共有者間の調整が必要になります。
そのため、
誰が土地を相続するのか
共有にするのか
売却するのか
はできるだけ早い段階で家族間でも整理しておくとよいでしょう。
相続登記を後回しにしない
相続した土地については、相続登記の義務化にも注意が必要です。
土地を今すぐ売却しない場合でも、
使わない土地だからそのままでいい
と放置するのではなく、必要な登記手続きを確認しましょう。
相続人が増えていくと、後になって売却や土地活用を進める際の調整が複雑になることがあります。
市街化調整区域であるかどうかとは別に、所有関係を整理しておくことが重要です。
遠方の土地なら管理方法も決める
相続した土地が遠方にある場合は、
売るか活用するか決まるまでの管理
も考えておきましょう。
土地によっては、
草刈り
樹木管理
不法投棄の確認
境界付近の確認
などが必要になります。
売却活動を始めたからといって、引渡しまで管理しなくてよいわけではありません。
特に長期間利用されていない土地では、雑草やごみの問題が周囲とのトラブルにつながることもあります。
管理の負担が大きい場合は、それ自体を売却判断の材料にしてよいでしょう。
相続した市街化調整区域の土地でやってはいけないこと
何も確認せず建物を建てる計画を進める
市街化調整区域では建築できる用途や条件が限定されます。
住宅会社や土地活用会社と具体的な契約を進める前に、自治体の許可基準を確認しましょう。
農地を勝手に駐車場や資材置場へ変える
使っていない農地でも、自由に別用途へ変更できるとは限りません。
必要な農地転用手続きを確認してください。
「市街化調整区域だから価値がない」と安く手放す
土地によっては住宅、事業用地、農地など別の需要があります。
土地条件を調べずに安く処分するのは避けましょう。
使い道が決まらないから放置する
活用や売却を保留すること自体は問題ありません。
ただし、
判断を保留する
と
管理を放棄する
のは別です。
保有している間は土地の状態を確認しましょう。
相続した土地を判断するときのチェックリスト
市街化調整区域の土地を相続したら、次の項目を確認してみましょう。
- 市街化調整区域か
- 登記上の地目
- 現況
- 建物の有無
- 過去の開発・建築許可
- 建替え可能か
- 農地法の規制があるか
- 接道条件
- 上下水道などのインフラ
- 固定資産税額
- 年間管理費
- 周辺需要
- 土地活用した場合の初期費用
- 想定できる収入
- 売却査定価格
- 家族が将来使う予定
- 相続登記が済んでいるか
- 共有者がいるか
全部を一度に決める必要はありません。
まず土地の条件を整理し、
保有
土地活用
賃貸
売却
を比較していきましょう。
市街化調整区域の土地を相続した場合のよくある質問
Q. 市街化調整区域の土地を相続したら売れませんか?
売却できます。
ただし、建築や開発に制限があるため、市街化区域の宅地より買い手が限定される場合があります。
土地の建築可能性や現在の利用状況を整理してから査定を受けるとよいでしょう。
Q. 市街化調整区域なら相続放棄した方がいいですか?
市街化調整区域という理由だけで相続放棄を判断することはできません。
建築できる土地や、農地・資材置場などとして利用価値がある土地もあります。
また、相続放棄は特定の土地だけを選んで放棄する制度ではありません。
相続財産全体を確認して判断する必要があります。
Q. 相続した農地を駐車場にできますか?
農地転用が認められれば可能な場合があります。
ただし、市街化調整区域内の農地では転用が難しいケースもあります。
自己判断で造成せず、農業委員会などへ確認しましょう。
Q. 古い実家が建っていれば建替えできますか?
必ず建替えできるとは限りません。
既存住宅がどのような経緯や許可で建てられたのかによって、建替え条件が異なる場合があります。
【関連記事】市街化調整区域でも家は建てられる?建築できるケースと注意点
Q. 使い道がない土地でも固定資産税はかかりますか?
原則として、所有している土地には固定資産税がかかります。
実際の税額は評価額や土地の状況などによって異なります。
土地から収入がなくても、固定資産税や管理費が続くことがあるため、年間維持費を確認しておきましょう。
Q. 市街化調整区域でも駐車場シェアはできますか?
すでに適法に駐車スペースとして使われている場所などであれば、検討できる場合があります。
ただし、市街化調整区域だから自由に駐車場へ変更できるわけではありません。
特に農地の場合は農地転用などを確認しましょう。
【関連記事】特Pで自宅駐車場を貸す完全ガイド|登録・収入・トラブルまで解説
Q. 売るか土地活用するか迷ったらどうすればいいですか?
まず、
年間維持費
活用に必要な初期投資
想定収入
売却査定価格
を比較すると分かりやすくなります。
土地活用するために大きな投資が必要なのに需要が弱い場合は、無理に活用せず売却する方がよいこともあります。
まとめ|相続した市街化調整区域は「何ができる土地か」から確認する
以上、市街化調整区域の土地を相続したらどうする?確認事項と活用・売却の判断...というお話でした。
市街化調整区域の土地を相続しても、
使えない土地
売れない土地
と決めつける必要はありません。
まず、
区域区分
地目・現況
建物と許可履歴
農地規制
接道
インフラ
年間維持費
を確認します。
そのうえで、
そのまま保有する
駐車場などで活用する
農地や事業用地として貸す
売却する
という選択肢を比較しましょう。
特に重要なのは、
「せっかく相続した土地だから何か建てなければ」
と考えないことです。
市街化調整区域では、
法的にできること
↓
周辺需要
↓
採算
の順番で考える方が失敗を避けやすくなります。
使う予定がなく、管理費や固定資産税だけが続くなら売却を検討する意味があります。
一方で、現在の状態を大きく変えずに貸せる土地なら、保有しながら活用する方法もあります。
まず土地そのものの条件を知り、そのうえで家族にとって負担の少ない方法を選びましょう。
【関連記事】市街化区域と市街化調整区域の違いは?建築・土地活用までわかりやすく解説