借地権付き土地を相続したらどうする?地主が最初に確認すること

借地権付き土地を相続したらどうする?

親から土地を相続したものの、「知らない人の家が建っている」「昔から土地を貸しているらしいけれど、契約内容がよく分からない」というケースがあります。

借地人がいる土地を相続した場合、まずやるべきなのは地代の値上げや土地の売却ではありません。

契約書や契約時期、地代、土地上の建物などを確認し、現在どのような借地関係になっているのかを把握することが最優先です。

目次

結論|借地人がいる土地を相続したら契約関係の確認から始める

親が所有していた土地を相続すると、土地だけでなく、それまで続いていた借地関係も無視することはできません。

そのため、

「地主が自分に変わったから新しく契約し直そう」

「地代が安いので来月から値上げしよう」

「自分で使いたいから土地を返してもらおう」

と、いきなり話を進めるのは避けた方がよいでしょう。

まず確認したいのは次の項目です。

確認すること主な内容
土地の名義誰が土地を相続したのか
借地契約書契約内容・契約当事者
契約開始時期いつから貸しているのか
借地権の種類普通借地権・定期借地権など
契約期間満了日・更新時期
地代金額・支払方法・滞納の有無
土地上の建物所有者・用途・登記
過去の取り決め更新料・承諾料など

特に先代から何十年も貸している土地では、

「現在の地主も借地人も、最初の契約をよく知らない」

というケースがあります。

相続を機会に一度、権利関係を整理しておくことが重要です。

「借地権付き土地を相続した」の意味を最初に整理

「借地権付き土地を相続した」という言葉には、少し注意が必要です。

大きく分けると、

借地人側が借地権を相続したケース

と、

地主側が借地人のいる土地を相続したケース

があります。

この記事で解説するのは後者です。

たとえば父親が土地を所有しており、その土地をAさんへ貸していて、Aさんが自宅を建てているとします。

父親が亡くなり、子どもがその土地を相続したケースです。

この場合、子どもは土地の所有者、つまり地主側になります。

借地権が設定されている土地について、地主側から見た土地の所有権を一般に**「底地」**と呼ぶことがあります。

つまりこの記事では、

「借地人がいる底地を親から相続した地主はどうすればよいのか」

という視点で解説していきます。

借地人がいる土地を相続したら最初に確認する8項目

では、実際に何から調べればよいのでしょうか。

順番に確認していきましょう。

1.土地の所有者と相続登記を確認する

最初に確認したいのが土地そのものです。

土地の所在地、地番、面積、所有者などを確認します。

登記事項証明書を取得すれば、登記上の土地所有者などを確認できます。

また、不動産を相続した場合には相続登記についても確認が必要です。

現在は相続登記が義務化されており、原則として不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。

遺産分割がまだ終わっていない場合などは扱いが異なることもあるため、相続手続きそのものが整理できていない場合は司法書士などへの相談も検討しましょう。

2.借地契約書を探す

次に重要なのが借地契約書です。

親が保管していた不動産関係の書類から、

  • 土地賃貸借契約書
  • 更新契約書
  • 覚書
  • 合意書
  • 地代の領収書
  • 借地人との手紙
  • 建替えなどの承諾書

といった書類を探します。

現在の契約書だけでなく、過去の更新書類なども見つかれば保管しておきましょう。

古い借地では、何十年にもわたって契約が更新されているケースがあります。

最初の契約書だけを見ても、現在の条件が分からないことがあるからです。

3.いつから土地を貸しているのか確認する

契約開始時期も非常に重要です。

現在の借地借家法は1992年8月1日に施行されています。

それ以前から続いている借地関係では、旧借地法が関係する可能性があります。

たとえば、

「父が40年前から貸していた」

「祖父の代から借地人が住んでいる」

という土地なら、単純に現在の借地借家法の普通借地権だけを前提として判断しない方がよいでしょう。

契約書の日付だけでなく、過去の更新書類なども含めて、いつから借地関係が続いているのかを確認します。

借地借家法そのものについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

【関連記事】借地借家法とは?土地を貸す前に地主が知っておきたい注意点

4.普通借地権か定期借地権か確認する

次に借地権の種類を確認します。

代表的なのが普通借地権と定期借地権です。

普通借地権には更新の仕組みがあります。

一方、定期借地権は一定の要件のもと、契約期間の満了によって借地関係を終了させることを前提とした制度です。

この違いは地主にとって非常に重要です。

「あと3年で契約期間が終わるから、そのとき土地を返してもらおう」

と思っていても、普通借地権なら期間満了だけで当然に土地が返還されるとは限りません。

借地権の種類が分からない場合には、契約書のタイトルだけでなく内容まで確認しましょう。

5.契約期間と次回の更新時期を確認する

借地権の種類と合わせて確認したいのが契約期間です。

チェックするのは、

「いつ契約が始まったのか」

「何年間の契約なのか」

「過去にいつ更新されたのか」

「次の契約満了日はいつなのか」

などです。

特に普通借地権では、契約期間が終わることと、借地関係そのものが終了することを同じように考えないことが重要です。

相続した地主が、

「来年で30年だから返してください」

と借地人へ突然伝えても、それだけで土地を返してもらえるとは限りません。

もし相続後に借地契約を更新したくないのであれば、早めに契約内容を確認しておきましょう。

【関連記事】借地契約を更新したくない地主はどうする?更新拒絶の正当事由とは

6.現在の地代と支払状況を確認する

次は地代です。

確認したいのは、

  • 月額または年額いくらなのか
  • いつ支払われるのか
  • 振込なのか現金なのか
  • 滞納はないか
  • 過去に値上げ・値下げしたことがあるか

などです。

契約書に地代が書かれていても、現在の支払額とは違っている可能性があります。

たとえば30年前の契約書には月額1万円と書かれていて、その後の話し合いで1万5,000円になっているケースも考えられます。

親の預金通帳や地代の領収書なども確認して、実際に現在いくら受け取っているのかを把握しましょう。

また、何か月も入金されていない場合には、地代滞納の有無も確認します。

7.土地上の建物は誰のものか確認する

借地人がいる土地では、土地だけでなく建物の確認も重要です。

「Aさんに土地を貸しているから、建物もAさんのものだろう」

と決めつけない方がよいでしょう。

長い借地関係では、

  • 当初の借地人が亡くなっている
  • 借地権が相続されている
  • 建物が建て替えられている
  • 建物所有者が変わっている

といった可能性があります。

土地と建物の登記事項証明書などを確認し、

現在の土地所有者・建物所有者・借地契約上の借主が誰なのか

を整理します。

この3者が一致しているとは限りません。

8.更新料や承諾料など過去の取り決めを確認する

借地では地代以外のお金が問題になることもあります。

たとえば、

  • 契約更新時の更新料
  • 建物建替え時の承諾料
  • 借地権譲渡に関する承諾料
  • 契約条件変更に伴う金銭

などです。

これらについて過去にどのような取り決めがあったのか、書類や入出金記録を確認します。

「親は毎回もらっていたらしい」

という話だけではなく、できるだけ書面や記録で確認しておきましょう。

借地契約書が見つからない場合はどうする?

相続した借地で意外と困るのが、

「契約書がどこにもない」

というケースです。

特に祖父母の代から何十年も貸している土地では、契約書が紛失していることも考えられます。

しかし、

契約書が見つからない=借地関係が存在しない

とは限りません。

借地人が長年土地を利用し、地代が支払われてきた実態があるなら、契約書が見つからないからといって「今日から土地を返してください」と単純に処理できるものではありません。

まずは残っている資料を集めましょう。

親の預金通帳を確認する

毎月または毎年、同じ人から一定額が振り込まれていないか確認します。

振込名義と金額から、現在の地代を把握できる可能性があります。

古い領収書や手紙を探す

現金で地代を受け取っていた場合には、領収書の控えなどが残っているかもしれません。

また、借地人との手紙や建替え時の書類などから契約内容を推測できることもあります。

土地と建物の登記を確認する

土地の所有者だけでなく、土地上の建物の所有者も確認します。

いつ建物が建てられたのかなど、借地関係を整理する手掛かりになることがあります。

借地人の話だけで契約内容を決めない

契約書が見つからない場合、借地人へ事情を聞くことも必要になるでしょう。

ただし、

「昔からこういう約束でした」

という一方の記憶だけで契約内容を確定させるのも避けたいところです。

双方が保管している書類や過去の支払い記録などを照らし合わせながら整理します。

契約内容について双方の認識が大きく違う場合には、弁護士など専門家へ相談することも検討しましょう。

相続したら借地人と契約をやり直す必要はある?

土地を相続して地主が変わると、

「新しい地主になったのだから、借地契約も一から作り直した方がいいのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、地主が相続によって変わったことだけを理由に、それまでの借地関係を白紙に戻して好きな条件で契約し直せるわけではありません。

まず従来の契約内容や権利関係を確認することが先です。

そのうえで、当事者間で必要な確認や手続きを進めます。

特に、

「新しい契約書を作るついでに地代も倍にしよう」

「契約期間を短く変更しよう」

「普通借地権から定期借地権へ変更しよう」

などと一方的に条件を変えられるものではありません。

相続した地主にとっては新しく始まった土地管理でも、借地人から見れば何十年も続いている契約かもしれないからです。

まず借地人へ何を連絡すればいい?

相続関係が整理できたら、借地人との連絡も必要になります。

いきなり、

「今後の地代は値上げします」

「次回は更新しません」

という話から始める必要はありません。

まずは、

「土地所有者が相続によって変わったこと」

「今後の連絡先」

「地代の支払先などに変更がある場合はその内容」

など、必要な事項を整理して伝えます。

ただし、遺産分割が終わっておらず誰が土地を取得するのか決まっていない場合や、相続人が複数いる場合には注意が必要です。

誰が地代を受け取るのかなどを相続人の一人が勝手に決めると、相続人同士のトラブルにつながる可能性があります。

まず相続関係を整理してから、借地人への対応を進めましょう。

相続を機に地代を値上げできる?

借地人付きの土地を相続して契約内容を確認すると、

「こんなに安い地代で貸していたの?」

と驚くことがあります。

特に数十年前から続いている借地では、現在の土地価格や固定資産税と比べて地代が低く感じられるケースもあるでしょう。

そこで、

「地主が自分に変わったのだから、この機会に地代を値上げしたい」

と考えるかもしれません。

しかし、相続によって地主が変わったことだけを理由に、地代を自由な金額へ一方的に変更できるわけではありません。

地代の増減が問題になるケース

借地借家法では、土地に対する税金などの負担の増減、土地価格の変動その他の経済事情の変動、近隣の類似する土地の地代等と比較して現在の地代が不相当となった場合には、地代等の増減を請求できる仕組みがあります。

つまり、

「相続したから値上げする」

のではなく、

現在の地代が適正なのか

という観点から考える必要があります。

たとえば固定資産税などの負担が大きく上昇している、周辺の地代と比較して著しく低いといった事情があれば、地代の見直しを検討する材料になるでしょう。

一方で、

「今まで月1万円だったから来月から3万円にします」

と地主だけで決めれば、そのまま借地人が従わなければならないというものではありません。

地代が安くてもすぐ値上げ交渉を始めない

相続したばかりなら、まず過去の経緯を確認することをおすすめします。

現在の地代だけを見ると安くても、

  • いつからその金額なのか
  • 過去に値上げ交渉をしたことがあるか
  • 固定資産税等はいくらなのか
  • 周辺の地代はどうなのか
  • 契約書にどのような取り決めがあるか

などを調べないと判断しにくいからです。

相続をきっかけに借地関係を整理すること自体はよいことですが、地主が変わったことと地代の適正額は分けて考えるのがポイントです。

今後、ここから「借地の地代が安すぎる!地主は値上げできる?」という記事へ内部リンクすると、さらに詳しく説明できます。

相続した土地を借地人から返してもらえる?

借地人付き土地を相続した人の中には、

「地代をもらい続けるより、自分で土地を使いたい」

という方もいるでしょう。

たとえば、

「自分の家を建てたい」

「子どもに土地を使わせたい」

「アパートを建てたい」

「更地にして売却したい」

といったケースです。

しかし、地主が亡くなって相続が発生したこと自体は、借地人に土地を返してもらう理由にはなりません。

普通借地権であれば更新の仕組みがあり、地主側から更新を拒絶する場合には正当事由が問題になります。

したがって、

「父から相続したので、来年から自分で使います」

と一方的に通知するだけで借地関係を終了できるとは限りません。

【関連記事】借地契約を更新したくない地主はどうする?更新拒絶の正当事由とは

借地人と合意して返してもらう方法もある

一方、地主と借地人が話し合い、双方が納得すれば、合意によって借地関係を終了することも考えられます。

その場合には、

  • 明渡し時期
  • 土地上の建物をどうするか
  • 解体を誰が行うか
  • 費用を誰が負担するか
  • 金銭的な条件を設けるか

などを話し合うことになります。

相続した地主が「土地を返してほしい」と考えていても、借地人側はそこを自宅として長年利用しているかもしれません。

最初から強い姿勢で退去を求めるより、現在の契約関係と双方の事情を整理したうえで対応することが重要です。

借地人付き土地を相続しても売却できる?

「自分では管理できないので売ってしまいたい」という選択肢もあります。

借地人がいるからといって、土地を絶対に売却できないわけではありません。

借地人が土地を利用している状態で、地主側が持つ土地の権利を売却する方法があります。

一般にこのような土地は底地と呼ばれます。

ただし、自由に利用できる更地と、借地人が利用している底地では条件が大きく異なります。

買主が土地を購入しても、借地関係を無視してすぐ自由に土地を利用できるわけではないためです。

そのため、売却を検討する場合には、

「更地なら○万円だから、この土地も同じくらいで売れるだろう」

とは考えない方がよいでしょう。

相続した底地を売る3つの方法

借地人付き土地を手放したい場合、大きくいくつかの方法が考えられます。

借地人へ底地を売る

まず考えられるのが、現在の借地人へ土地を売却する方法です。

借地人からすれば、それまで借りていた土地の所有権を取得できれば、土地と建物の権利関係を一本化できるメリットがあります。

地主側も借地関係を解消して現金化できます。

そのため、双方の条件が合えば合理的な方法の一つです。

ただし、いくらで売却するのが適切なのかは別問題です。

相続したばかりで土地の価値や借地権との関係がよく分からない状態なら、借地人から提示された金額だけで即決しない方がよいでしょう。

第三者へ底地として売る

借地人が購入を希望しない場合には、借地人がいる状態のまま第三者へ売却する方法もあります。

この場合、購入後も借地関係が続くことを前提に土地を評価する必要があります。

底地を取り扱う不動産会社などもありますが、買取価格や条件には差が出る可能性があります。

売却を急いでいないなら、複数の選択肢を比較して判断した方がよいでしょう。

借地人と権利関係を整理してから売却する

地主と借地人が協力し、借地権と底地の関係を整理してから土地を売却する方法が検討されることもあります。

ただし、これは借地人側との合意が必要になるため、地主だけで進められるものではありません。

土地の価値が大きい場合には、税金も含めて専門家へ相談しながら進めた方がよいでしょう。

借地人から「土地を買いたい」と言われたら?

相続によって地主が変わったことを借地人へ伝えると、

「この機会に土地を売ってもらえませんか?」

と言われる可能性もあります。

借地人側にとっては、長年借りてきた土地を購入する機会になるからです。

地主側も、

「自分では使う予定がない」

「地代収入もそれほど多くない」

「子どもへ複雑な権利関係を残したくない」

という場合には、売却を検討する価値があります。

ただし、相続直後にその場で価格を決める必要はありません。

まず、

土地そのものの価格

借地権と底地の関係

現在の地代

今後保有した場合の収益

売却した場合の税金

などを整理して比較しましょう。

「親から○万円で売る約束をしていた」と言われたら?

これも注意したいケースです。

借地人から、

「お父さんとは将来○○万円で売ってもらう話になっていました」

と言われる可能性があります。

その場合も、その場で「分かりました」と答えるのではなく、まず書面や過去のやり取りが残っていないか確認しましょう。

親と借地人の間にどのような合意が成立していたのかによって対応が変わる可能性があります。

相続人だけで判断できない場合には、専門家へ確認することをおすすめします。

借地人付き土地の固定資産税は誰が払う?

借地人が土地を使っていると、

「固定資産税も借地人が払うのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、土地の固定資産税は原則として、その年の1月1日時点で固定資産課税台帳に所有者として登録されている人に課税されます。

つまり、借地人が土地を利用して地代を払っていても、土地の固定資産税の納税義務者は基本的に土地所有者側です。

一方、土地上に借地人所有の建物がある場合、その建物の固定資産税については建物所有者側の問題になります。

地主としては、

地代収入がそのまま利益になるわけではない

ことを理解しておきましょう。

地代収入と固定資産税を比べてみる

借地人付き土地を相続したら、一度年間の収支を計算してみることをおすすめします。

たとえば、

地代:月2万円

なら、年間の地代収入は24万円です。

そこから土地の固定資産税など、土地を所有するために必要な支出があります。

さらに、契約管理や将来の更新、借地人とのやり取りなどもあります。

相続前は、

「土地を持っているから毎月地代が入ってくる」

という程度にしか聞いていなかったものの、実際に計算すると手残りがそれほど多くないケースもあるでしょう。

反対に、長期間安定して地代が入り、ほとんど管理の必要がない土地なら、そのまま保有する選択肢もあります。

売却するか保有するかを決める前に、まず年間収支を把握することが大切です。

地代収入には税金がかかる?

借地人から受け取る土地の地代は、一般的には不動産所得として所得税の対象になります。

相続前は親が確定申告していたとしても、相続後は土地を取得して地代を受け取る人が変わります。

そのため、

「地代が毎月振り込まれるようになったけれど、税金について何もしていない」

という状態にならないよう注意しましょう。

また、相続した年は遺産分割の時期などによって扱いの確認が必要になる場合があります。

具体的な申告について分からない場合には税務署や税理士などへ確認すると安心です。

兄弟で借地人付き土地を相続するときは注意

借地人との関係だけでなく、相続人同士の関係も考えておきたいところです。

たとえば、父親の底地を兄弟3人で共有したとします。

当初は、

「とりあえず3人で持っておけばいい」

と考えるかもしれません。

しかし数年後、

兄:「地代が入るからそのまま持ちたい」

弟:「現金が必要なので売りたい」

妹:「借地人に買ってもらえばいい」

と意見が分かれる可能性があります。

さらに、

  • 地代を誰が受け取るのか
  • 固定資産税を誰が払うのか
  • 借地人との窓口を誰にするのか
  • 更新時にどうするのか
  • 建替えの相談をされたらどうするのか

といった問題も出てきます。

借地人付き土地は、通常の空き地以上に長期的な契約関係が続く可能性があります。

そのため、「とりあえず共有」だけで決めるのではなく、将来の管理や処分まで考えて遺産分割することが重要です。

借地人から建て替えたいと言われたら?

相続後、借地人から突然、

「家が古くなったので建て替えたい」

と相談されることもあります。

この場合も、すぐに「いいですよ」と口頭で承諾するのは避けた方がよいでしょう。

まず契約書を確認し、

  • 建替えについてどのような取り決めがあるか
  • 建物の用途は変わらないか
  • 契約期間との関係
  • 過去に承諾料等の取り決めがあったか

などを確認します。

何十年も続く借地では、相続した地主が把握していない過去の取り決めがあるかもしれません。

特に今後、土地を売却したい、将来返してもらいたいと考えている場合には、建替えへの対応が今後の権利関係にも影響する可能性があるため、専門家へ確認したうえで判断した方がよいでしょう。

借地人付き土地は「そのまま持つ・売る・返してもらう」のどれがいい?

借地人付き土地を相続すると、

「このまま地代をもらい続けるべきか」

「売却して現金化した方がいいのか」

「できれば土地を返してもらって自分で活用したい」

と迷うことがあります。

どれが正解とは一概にいえません。

現在の地代、土地の価値、借地契約の内容、将来自分や家族が土地を使う可能性などによって判断が変わるからです。

まずは主な選択肢を比較してみましょう。

選択肢メリット注意点
そのまま貸す地代収入を継続できる契約管理が続く
地代を見直す収支を改善できる可能性自由に値上げできるわけではない
借地人へ売却権利関係を整理しやすい売却価格の検討が必要
第三者へ底地として売却借地関係から離れられる更地と同じ価格とは限らない
明渡しを求める自分で利用できる可能性普通借地権では正当事由などが問題になる

そのまま貸し続ける

特に土地を使う予定がなく、借地人から地代が安定して支払われているのであれば、そのまま保有するのも一つの方法です。

アパート経営などとは違い、土地だけを貸している場合には、地主が建物の修繕や設備交換を行う必要がないケースが一般的です。

毎月または毎年安定した地代が入ってくるなら、無理に借地関係を解消する必要はありません。

ただし、地代収入だけを見るのではなく、固定資産税などを差し引いた実際の手残りを確認しておきましょう。

借地人へ土地を売る

今後その土地を使う予定がなく、相続人も借地関係を引き継ぎたくないのであれば、借地人への売却を検討する方法もあります。

地主にとっては底地を現金化でき、借地人にとっては土地と建物の権利関係を一本化できる可能性があります。

双方にメリットがある方法ですが、問題になるのが売却価格です。

相続したばかりで底地の価値が分からない状態なら、借地人から提示された価格だけで決めず、不動産会社や不動産鑑定士などへ相談する方法もあります。

第三者へ底地として売る

借地人が購入しない場合でも、底地として第三者へ売却できる可能性があります。

「地代はそれほど多くない」

「遠方なので管理したくない」

「子どもへ複雑な権利関係を残したくない」

という場合には選択肢になります。

ただし、底地は買主が自由に利用できる土地ではないため、一般的な更地とは売却条件が異なります。

売却を検討するなら、複数の方法を比較してから判断したいところです。

土地を返してもらう

将来自分や子どもが使いたい場合には、土地の返還を希望することもあるでしょう。

ただし、相続によって地主が変わったからといって、借地人へ一方的に明渡しを求められるわけではありません。

特に普通借地権では、契約更新を拒絶するときに正当事由が問題になります。

土地を返してもらいたい場合には、現在の契約内容を確認したうえで、借地人との合意による解決も含めて検討します。

【関連記事】借地契約を更新したくない地主はどうする?更新拒絶の正当事由とは

「地代が安いから売る」は少し待った方がいい

借地人付き土地を相続すると、地代の低さだけを見て、

「年間20万円程度なら持っていても意味がない」

と考えてしまうことがあります。

しかし、売却を決める前に、

  • 年間地代はいくらか
  • 固定資産税などはいくらか
  • あと何年契約が続くのか
  • 土地そのものにはどの程度の価値があるのか
  • 借地人に購入意向があるか

などを確認しましょう。

特に借地人が底地の購入を希望している場合には、第三者へ売却するのとは条件が変わってくる可能性があります。

反対に、地代が低く、管理の手間があり、将来も土地を利用する予定がないのであれば、売却して権利関係を整理することにもメリットがあります。

重要なのは、地代の金額だけで保有・売却を決めないことです。

借地人付き土地を相続したら専門家へ相談した方がいいケース

借地人付き土地を相続したからといって、必ず専門家へ依頼しなければならないわけではありません。

契約書があり、地代も問題なく支払われていて、そのまま貸し続けるのであれば、大きな問題が起こらないケースもあります。

一方、次のような場合は専門家への相談を検討した方がよいでしょう。

契約書が見つからない

何十年も前から貸しており、契約内容が分からない場合です。

借地人と地主側で認識が違う可能性もあります。

1992年8月1日より前から続いている

旧借地法が関係する可能性があります。

「現在の借地借家法ではこうなっている」という情報だけで判断しないよう注意が必要です。

地代を滞納されている

地代滞納が続いている場合には、単なる更新の問題とは別に契約解除などが問題になる可能性があります。

自己判断で土地を取り戻そうとせず、弁護士などへ相談した方がよいでしょう。

借地人と建物所有者が違う

契約上の借地人、現在の建物所有者、実際に住んでいる人などが違っている場合には、権利関係を整理する必要があります。

借地人から建替えや売却の相談をされた

「家を建て替えたい」

「借地権を売りたい」

「土地を買い取りたい」

などの相談を受けた場合です。

その場で口頭承諾せず、契約内容を確認してから判断しましょう。

土地を返してもらいたい

普通借地権の更新拒絶では正当事由が問題になるため、早い段階で専門家へ相談することをおすすめします。

相続人同士で意見が違う

「兄は保有したい、弟は売りたい」といった状態なら、借地人との交渉を始める前に相続人側の方針を整理する必要があります。

借地人付き土地を相続したときのチェックリスト

最後に、相続後に確認する順番を整理しておきます。

  1. 土地の登記事項証明書を確認する
  2. 相続登記の状況を確認する
  3. 借地契約書・更新契約書を探す
  4. 契約開始時期を確認する
  5. 普通借地権・定期借地権などの種類を確認する
  6. 契約満了日・過去の更新状況を確認する
  7. 現在の地代と入金状況を確認する
  8. 土地上の建物所有者を確認する
  9. 更新料・承諾料など過去の取り決めを確認する
  10. 固定資産税など年間の土地保有コストを確認する
  11. 相続人が複数なら今後の管理方針を決める
  12. そのまま貸す・売却する・返還を求めるなど今後の方針を検討する

相続した直後に結論を出す必要はありません。

「現在どうなっているのか」を把握してから、「これからどうするか」を考える。

この順番が大切です。

よくある質問

Q. 親の借地契約は相続するとどうなりますか?

地主が亡くなったからといって、それだけで借地契約が終了するわけではありません。

土地を相続した側は、まず従来の契約内容や借地関係を確認する必要があります。

「自分は契約した覚えがないから関係ない」と考えないようにしましょう。

Q. 地主が亡くなったら借地人は土地を返す必要がありますか?

地主が亡くなったことだけを理由に、借地人が土地を返還しなければならないわけではありません。

相続後も既存の借地関係を前提として対応する必要があります。

Q. 相続したら借地人と契約をやり直す必要がありますか?

相続したことだけを理由に、それまでの契約を白紙にして新しい条件で契約し直せるわけではありません。

まず既存の契約書や更新履歴を確認しましょう。

Q. 借地契約書がなくても借地権は残りますか?

契約書が見つからないからといって、直ちに借地権が存在しないことになるわけではありません。

長年土地を利用して地代を支払ってきたなどの実態がある場合には、過去の支払記録や書類などから借地関係を確認する必要があります。

Q. 相続を機に地代を値上げできますか?

「相続したから」という理由だけで自由な金額へ変更できるわけではありません。

現在の地代が不相当となっているかどうかなどを踏まえて検討する必要があります。

Q. 相続した土地を借地人から返してもらえますか?

相続したこと自体を理由に返還を求められるわけではありません。

普通借地権の更新を地主側から拒絶する場合には、正当事由が問題になります。

借地人と話し合い、合意によって借地関係を終了する方法が検討されることもあります。

Q. 借地人がいる土地でも売却できますか?

借地人がいる状態でも、底地として売却できる可能性があります。

ただし、自由に利用できる更地とは条件や評価が異なるため、売却前に土地の価値や借地関係を整理しておきましょう。

Q. 借地人へ土地を売ることはできますか?

双方が合意すれば、地主から借地人へ底地を売却する方法も考えられます。

借地人にとっても土地と建物の権利関係を一本化できる可能性があるため、有力な選択肢になることがあります。

Q. 借地人付き土地の固定資産税は誰が払いますか?

土地の固定資産税は、原則としてその年の1月1日時点で固定資産課税台帳に所有者として登録されている人に課税されます。

借地人が地代を払って土地を利用しているからといって、土地の固定資産税の納税義務者も借地人になるわけではありません。

Q. 兄弟で底地を相続しても大丈夫ですか?

共有で相続すること自体は考えられますが、将来の管理や処分について意見が分かれる可能性があります。

地代の受取方法、固定資産税の負担、借地人との窓口、将来売却する場合などまで考えておくことが重要です。

まとめ|借地人付き土地を相続したら「売る・返してもらう」より先に現状確認

以上、借地権付き土地を相続したらどうする?地主が最初に確認すること...というお話でした。

借地人がいる土地を相続すると、「土地を返してもらえる?」「地代を上げられる?」「売却できる?」といったことが気になります。

しかし、最初にするべきなのは売却や明渡しの交渉ではありません。

まず、

  • 借地契約書
  • 契約開始時期
  • 借地権の種類
  • 契約期間・更新時期
  • 現在の地代
  • 地代の支払状況
  • 土地上の建物所有者
  • 過去の更新料や承諾料

などを確認し、親からどのような借地関係を引き継いだのか把握することが先です。

そのうえで、年間の地代収入と固定資産税などの支出も確認し、

そのまま貸すのか、借地人へ売るのか、底地として売却するのか、将来的に土地を返してもらいたいのか

を考えていきます。

特に古い借地では、契約書がなかったり、旧借地法が関係していたり、親と借地人の間だけで取り決めが行われていたりすることもあります。

「土地を相続した=自由に使える土地が増えた」とは限りません。

だからこそ、借地人付き土地を相続したときは、まず権利関係を整理してから今後の活用方法を考えることが重要です。

借地借家法の基本から確認したい方はこちらも参考にしてください。
【関連記事】借地借家法とは?土地を貸す前に地主が知っておきたい注意点

すでに土地を返してもらいたいと考えている場合はこちらです。
【関連記事】借地契約を更新したくない地主はどうする?更新拒絶の正当事由とは

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