
相続税対策としてアパートや賃貸マンションを建てると、土地の評価額が下がり、相続税が軽減される――その仕組みの中心にあるのが「貸家建付地(かしやたてつけち)」という考え方です。
しかし、仕組みを誤解したまま建てると、節税どころか将来的な負担が大きくなることもあります。
この記事では、貸家建付地の評価減がどのように計算されるのか、どんな条件で認められるのかをわかりやすく解説し、節税を目的としたアパート建築で失敗しないためのポイントを整理します。
貸家建付地とは?
貸家建付地とは、自分が所有する土地に建物を建て、その建物を他人に貸している土地のことをいいます。
つまり「自宅ではなく、人に貸している土地」です。
税法上、このような土地は「自由に使えない」ため、評価額を下げて計算できる仕組みになっています。
相続税では、この「自由度の低さ」を数値で表すことで、課税対象となる土地評価額を減らす=節税効果が生まれるという構造です。
評価減の計算式
貸家建付地の評価額は、以下の計算式で求めます。
貸家建付地の評価額=自用地評価額 ×〔1-(借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)〕
たとえば、
- 借地権割合:70%
- 借家権割合:30%
- 賃貸割合:100%
の場合、
1-(0.7×0.3×1.0)=1-0.21=0.79
つまり、自用地評価額の79%として計算でき、約21%の評価減が認められるということです。
さらに建物自体も評価減される
貸家建付地の節税効果は土地だけではありません。
建物自体も「人に貸しているもの」として評価が下がります。
一般的に、貸家の建物は自用建物(自宅)に比べて約30%評価が下がるとされています。
そのため、土地と建物を合わせたトータルでみると、全体で約60%前後の相続税評価減になるケースもあります。
節税のしくみを比率で整理すると
- 現金で持っている → 評価100%
- 自宅(自用地)にする → 評価100%
- 人に貸す(貸家建付地)にする → 評価約80%
- 建物も貸家にする → 評価約70%

つまり、「貸している」状態をつくることで、相続財産の評価を下げられるというのが節税の本質です。
注意点①:評価減を目的にしすぎるとリスクが高い
節税効果ばかりを重視して建ててしまうと、空室や修繕などの運営リスクを見落としがちです。
借入をして建てた場合、家賃収入が減ると返済負担が残り、節税どころか資金繰りが悪化します。
アパート建築を勧める業者の中には、評価減を強調して「相続税が○%減ります」と訴えるところもありますが、
税金が減る=利益が出る、ではありません。
“事業として成り立つかどうか”を優先して判断する必要があります。
注意点②:貸家としての実態がないと評価減は認められない
形式的に建てただけで実際に貸していない場合、税務署から「貸家建付地ではない」と判断される可能性があります。
評価減を認めてもらうためには、
- 賃貸契約が成立している
- 家賃収入が発生している
- 継続的に賃貸運営を行っている
ことが条件になります。
「空室のまま相続を迎えた」「建てただけで募集していなかった」ケースでは、節税効果を否認される事例もあります。

注意点③:相続後の維持費や修繕費も考慮を
貸家建付地は一度建てると、毎年の維持管理コストが発生する資産です。
外壁や屋根の修繕、入退去対応、共用部の清掃など、将来の支出を含めて計画する必要があります。
節税で減った相続税よりも、長期の修繕費やローン負担の方が重くなることもあります。
短期の税金だけでなく、20年後の収支を見据えて判断することが大切です。
トランクルームや貸倉庫との違い
貸家建付地は「住宅」を貸す場合の評価減ですが、トランクルームや貸倉庫は「貸付事業用宅地」として別枠で評価減を受けられます。
アパートよりも投資規模を抑えられ、200㎡まで50%減額という制度が使える可能性があります。
大規模に借金をして建てるより、小規模で実態ある事業を継続する方が、安全かつ現実的な相続対策といえるでしょう。

まとめ|数字よりも“続けられるか”で判断を
以上、貸家建付地の評価減を正しく理解|節税効果の仕組みと注意点解説...というお話でした。
貸家建付地の評価減は、相続税を軽減できる強力な制度です。
しかし、「建てれば節税できる」という単純な話ではありません。
- 実際に貸していること
- 継続して事業を行っていること
- 無理のない規模で維持できること
この3つを満たして初めて、“認められる節税”になります。
相続対策の本質は、「残す資産をどう守るか」。
節税のためではなく、次の世代が安心して引き継げる形を選ぶことが何より重要です。
