
相続対策で注目されるトランクルーム経営。建物評価を下げる効果や現金を不動産に変える節税効果が期待できますが、アパート経営とは仕組みが異なります。
この記事ではトランクルームとアパート経営を税負担・収益・リスクをシミュレーションで比較します。
相続対策としての土地活用、まず考えるべきこと
「相続税対策になる」と聞いてアパートを建てる方は多いですが、実際には節税になっても現金が減りすぎて生活が苦しくなるケースが後を絶ちません。
相続税対策は「税金を減らす」ことではなく、“資産を守りながら次世代へ渡す”ことが本質です。
ここでは、アパート経営とトランクルーム経営を比較しながら、相続対策としてのメリットと注意点を整理していきます。
トランクルーム経営が相続対策になる理由
① 現金を不動産に変えることで評価が下がる
相続税は、現金で持つよりも不動産に変えておいた方が評価が下がります。
トランクルームも建物を伴う土地活用であり、「貸付事業用宅地等の特例(小規模宅地の特例)」を使える可能性があります。
具体的には、貸付事業に該当すれば、土地の評価額を最大50%減額できる制度です。
ただし、形式的にトランクルームを設置しただけでは認められないこともあり、「継続的な賃貸事業」として運営している実態が必要です。
② 建物を建てることで固定資産税が軽減される
更地に比べ、建物が建つと「住宅用地の特例」ほどではありませんが、トランクルームにも課税標準の軽減効果があります。
鉄骨造で耐用年数が長く、減価償却費も計上できるため、所得税対策にもなります。
③ 現金を建物に変えることで散財リスクを抑えられる
現金をそのまま相続すると、分割や使途をめぐってトラブルになることがあります。
不動産という形にしておくことで、資産を“使い切らない形”で残せるのも実務的なメリットです。
ただし「相続税を下げるためだけ」に建てるのは危険
トランクルームは節税効果がある一方で、事業として採算が取れなければ意味がありません。
税金の軽減よりも、建設費や運営コストの方が上回ってしまうケースもあります。
よくある失敗例
- 利回りを重視せず“とりあえず建てた”結果、空室が続く
- 相続税は減ったがローン返済に追われて生活が苦しい
- 節税目的で建てたが、子どもが引き継がず売却してしまった
節税は“結果としてついてくるもの”であり、目的を「節税」にしてしまうと本末転倒です。
アパート経営との比較シミュレーション
同じ「相続対策」として検討されるアパートとトランクルーム。
それぞれのモデルケースで、収益・コスト・相続税評価を比較してみましょう。
| 項目 | アパート(軽量鉄骨2階建・6戸) | トランクルーム(重量鉄骨造・30室) |
|---|---|---|
| 建設費 | 約6,000万円 | 約3,000万円 |
| 年間収入 | 約480万円(家賃8万円×6戸) | 約360万円(月1万円×30室) |
| 表面利回り | 約8% | 約12% |
| 管理・修繕費 | 約90万円/年(共用部・設備) | 約36万円/年(清掃・点検) |
| 稼働率想定 | 90〜95% | 85〜95% |
| 相続税評価減 | 約60%(貸家建付地+建物評価減) | 約40〜50%(貸付事業用宅地) |
| 維持管理の手間 | 高い(入居者対応・修繕多) | 低い(設備少・長期利用) |
| 将来リスク | 家賃下落・修繕費増 | 需要変動・立地依存 |
(※数値は一般的な目安。地域や仕様により変動します)
比較のポイント
- 節税効果はアパートの方が大きいが、建設費とリスクも大きい
- トランクルームは収入規模は小さいが、運営が安定しやすい
- トランクルームは初期投資が少ないため、現金を減らしすぎずに節税効果を得る点が現実的
相続対策でトランクルームを検討する際の注意点
① 「貸付事業」として継続運営することが前提
節税の対象になるためには、「貸付事業」である実態が必要です。
形式的に施設を設置しただけでは、税務上“資産運用”と見なされる可能性があります。
契約書・帳簿・稼働実績など、事業としての証拠を残しておくことが重要です。
② 建設費のバランスを見誤らない
相続税の軽減効果だけを見て高額な建物を建てると、かえって資産を減らしてしまうことがあります。
トランクルームは「小規模で無理なく運営できる」ことが強み。
投資額を抑えること自体がリスク対策になります。
③ 継ぐ人が運営できるかを考えておく
子どもが遠方に住んでいたり、管理を引き継げない場合は、信頼できる管理会社を早めに決めておくことが必要です。
相続後に「誰が管理するのか」が曖昧だと、税効果も維持できません。
トランクルーム相続対策の「現実的な位置づけ」
トランクルームは、相続対策として次のような位置づけになります。
- 大規模な節税ではなく、「小さく減らす」「安定して残す」
- 家賃収入型よりも、“リスクを抑えた資産保全型”
- 建設費を抑えながら、土地を事業用として維持する
派手な効果はありませんが、堅実に資産を残すという意味で、「相続対策としてちょうどいいバランス」をとれる選択肢です。
事業は節税よりも「続けられる形」で残す
以上、トランクルームで相続対策は注意?アパート経営と比較したメリット...というお話でした。
アパートもトランクルームも、相続税を減らす効果はあります。
ただし、節税の大きさとリスクは比例します。
- アパート:節税効果は高いが、建設費・空室・修繕リスクが大きい
- トランクルーム:節税効果は中程度だが、安定性・維持のしやすさが高い
相続対策の本質は、“資産を残すこと”であって、“税金を減らすこと”ではない。
現金をすべて建物に変えてしまうのではなく、「どこまで投資し、どこを現金で残すか」を冷静に考えることが、最も賢い相続対策です。
