
アパートやトランクルームを建てると相続税評価が下がる理由は、貸家建付地・貸付事業用宅地の特例にあります。
この記事では「貸家建付地」と「貸付事業用宅地」の違いと適用条件をわかりやすく整理し、相続対策で注意するポイントを解説します。
「貸家建付地」と「貸付事業用宅地」は似て非なるもの
土地活用による相続対策を考えるときに必ず出てくるのが、「貸家建付地(かしやたてつけち)」と「貸付事業用宅地(かしつけじぎょうようたくち)」という2つの言葉です。
どちらも「人に貸している土地」という点では同じですが、評価の下がり方や税の扱いが異なります。
ざっくり言えば、
- 貸家建付地…アパートなど「住宅」を貸している土地
- 貸付事業用宅地…倉庫・トランクルーム・駐車場など「事業用」に貸している土地
という違いです。
貸家建付地とは?(アパート・マンションなど)
貸家建付地は、建物を所有し、それを人に貸している土地のことを指します。
アパートや賃貸マンションなどが典型的な例です。
相続税評価の仕組み
貸家建付地は、「自由に使えない土地」として評価が下がります。
具体的には、次の計算式で算出します。
貸家建付地評価額=自用地評価額 ×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
多くの地域では、借地権割合は70%・借家権割合は30%程度が目安。
つまり、70%×30%=21%程度の評価減となる計算です。
さらに、建物自体も「貸家」として建物評価額の30%程度が控除されます。
そのため、土地と建物を合わせると実質で60%前後の相続税評価減になることもあります。
貸家建付地のメリット
- 節税効果が大きい
- 居住用として社会的にも安定した資産
- 融資を受けやすい
貸家建付地のデメリット
- 建設費が大きくローン負担が重い
- 修繕・空室リスクが高い
- 将来の転用・売却が難しい
貸付事業用宅地とは?(トランクルーム・駐車場など)
貸付事業用宅地は、土地を事業に使って貸している状態を指します。
代表的なのがトランクルーム・貸倉庫・時間貸し駐車場などです。
小規模宅地の特例による評価減
相続税法上、「貸付事業用宅地」に該当すると、最大200㎡まで土地評価額の50%が減額されます。
ただし、これは自動的に適用されるわけではなく、事業としての実態があることが前提です。
- 継続的に賃貸している
- 複数人に貸している
- 事業所得として確定申告している
といった条件を満たしている必要があります。
貸付事業用宅地のメリット
- トランクルームや駐車場など小規模でも適用可能
- 建設費を抑えながら評価減を得られる
- 維持・管理の手間が少ない
貸付事業用宅地のデメリット
- アパートほどの評価減はない(最大50%)
- 事業実態が曖昧だと適用されないリスク
- 立地により収益性が左右される
両者の違いを比較してみよう
| 項目 | 貸家建付地 | 貸付事業用宅地 |
|---|---|---|
| 対象 | 住宅(アパート・マンションなど) | 事業用施設(トランクルーム・駐車場など) |
| 評価減の仕組み | 借地権割合×借家権割合 | 小規模宅地等の特例(最大50%減) |
| 主な税制効果 | 土地+建物で約60%減 | 土地評価50%減(200㎡まで) |
| 初期投資 | 大(数千万円〜) | 小(数百万円〜) |
| 運営リスク | 空室・修繕リスク高い | 管理が楽・安定しやすい |
| 継続要件 | 入居率の維持 | 事業継続(貸付契約・収入申告) |
| 向いている人 | 高所得・大規模土地オーナー | 小規模土地を堅実に活かしたい人 |
トランクルームは「貸付事業用宅地」としてバランスが良い
相続税の節税額だけを見ると、アパートなどの貸家建付地の方が有利に見えます。
しかし、実際のところは「投資額」と「リスクの大きさ」が比例します。
トランクルームのような貸付事業用宅地は、
- 初期費用が少ない
- 節税効果もある程度得られる
- 管理負担が軽い
という意味で、中間的でバランスの良い選択といえます。
節税を狙いすぎてアパートを建てるよりも、小規模に貸付事業を行う方が、資産を減らさずに相続税を抑える「現実的な相続対策」になります。
注意点:事業としての実態がないと特例が認められない
貸付事業用宅地の特例は、名目だけでは適用されません。
以下のようなケースでは、税務署に否認されることもあります。
- 空き区画が多く、事業として成立していない
- 賃貸契約書・帳簿・入金記録が整備されていない
- 相続直前に設置して事業実態が乏しい
特にコンテナを置いただけのトランクルームや駐車場は、「遊休地の一時活用」と見られやすいため、事業継続性を示す資料(契約書・帳簿・確定申告書)を残すことが重要です。

まとめ|“どれだけ減るか”より“どれだけ守れるか”
以上、貸家建付地と貸付事業用宅地の違いをわかりやすく解説|相続税評価とは?...というお話でした。
相続対策では、「評価をどれだけ下げられるか」よりも、「どれだけ資産を守れるか」を軸に考えることが大切です。
- 貸家建付地は節税効果が大きいが、リスクも大きい
- 貸付事業用宅地は効果は控えめだが、維持しやすく安全
相続は一度きりですが、建てた建物は何十年も残ります。
数字の節税効果にとらわれず、次の世代が維持できる形を選ぶことが、本当の意味での“賢い相続対策”です。
