農地転用の費用は誰が払う?地主と借主の負担・相場・注意点を解説

農地転用の費用は誰が払う

農地を駐車場や住宅、資材置き場などに変えるとき、「農地転用の費用は地主と借主のどちらが払うの?」と疑問に思う方は多いでしょう。
結論からいうと、農地転用費用の負担者について一律の決まりがあるわけではなく、誰が転用して何に利用するのか、地主と借主がどのような契約をするのかによって変わります。
この記事では、地主・借主それぞれのケースから、農地転用費用の負担と費用の考え方を分かりやすく解説します。

目次

結論|農地転用費用を誰が払うかは契約で決める

最初に結論を整理すると、「農地転用なら地主が払う」「借主が事業に使うなら必ず借主が払う」という一律のルールではありません。

農地法では農地転用の許可や届出について定められていますが、地主と借主の間で転用に必要な費用を最終的に誰が負担するかについては、具体的な土地活用計画や契約条件を踏まえて決めることになります。

そのため、実際には次のように考えると分かりやすいでしょう。

ケース費用負担の考え方
地主が自分で転用して利用地主負担になりやすい
借主の事業のために転用借主負担とする契約も多い
地主が造成してから事業者へ貸す地主が造成費等を負担する場合もある
地主・借主双方にメリットがある費用を分担する場合もある
借主が退去するとき原状回復の範囲を契約で決める

重要なのは、「農地転用だから誰が払う」と決めるのではなく、誰が何を行う土地活用なのかを整理することです。

地主負担になりやすいケース

地主自身が農地を転用し、自分で土地活用するのであれば、地主が費用を負担するのが自然です。

たとえば、自分の農地に住宅を建てる、自分で駐車場を経営する、自分の事業用地として利用するといったケースです。

この場合は、土地を所有している人と転用後に利用する人が基本的に同じです。
農地転用手続きだけでなく、必要に応じて測量、造成、舗装、排水工事などの費用も地主側で負担することになります。

ただし、「地主負担=農地法で決められている」という意味ではありません。
あくまで地主自身の土地活用として行うため、結果的に地主が必要な費用を負担するという考え方です。

借主負担になりやすいケース

事業者が地主から農地を借り、駐車場や資材置き場などとして利用するために転用する場合は、借主側が農地転用手続きや事業に必要な工事費を負担する契約も考えられます。

たとえば、事業者から地主へ、

「この土地を借りて資材置き場として使いたい」

という提案があった場合です。

借主の事業に合わせて必要となる造成や設備工事まで地主が負担するとは限りません。
借主側の事業計画によって必要になる費用であれば、借主負担とする契約もあります。

ただし、ここでも「借主が使うから必ず借主負担」と決めつけないことが大切です。

地主側が土地を造成して事業用地として貸し出し、その分を賃料へ反映する契約も考えられます。
誰がどこまで整備するのかによって費用負担は変わります。

地主と借主で分担するケースもある

農地転用に伴う費用を、すべて地主または借主のどちらか一方が負担しなければならないわけでもありません。

たとえば、土地そのものに関係する測量や境界確認は地主が負担し、借主の事業に必要な舗装や設備工事は借主が負担するといった分担も考えられます。

具体的には、

地主側
土地の境界確認、地主側の事情で行う土地整備など。

借主側
農地転用手続きに伴う専門家費用、事業専用の造成・舗装・設備工事など。

といった分け方です。

ただし、これも必ずこの通りになるわけではありません。

土地の状態、契約期間、賃料、転用後の土地の価値、退去時の原状回復などを含めて交渉することになります。

契約前に「原状回復」まで決めておく

農地転用では、最初にかかる費用だけでなく、借主が撤退するときの費用も重要です。

たとえば借主が農地を借り、砕石を敷いて資材置き場として利用したとします。
10年後に契約が終了したとき、

「砕石を撤去するのか」

「フェンスは残してよいのか」

「造成した状態で地主へ返すのか」

などが問題になる可能性があります。

契約時には、農地転用手続きの費用だけでなく、造成費、設備費、撤去費、原状回復費まで含めて負担者を決めておくことが大切です。

特に事業者へ長期間貸す場合は、入口の費用だけで判断せず、契約終了時に土地をどのような状態で返してもらうのかまで明文化しておきましょう。

そもそも農地転用とは?

農地転用とは、農地を農業以外の目的で利用することです。

たとえば、

  • 住宅を建てる
  • 駐車場にする
  • 資材置き場にする
  • 店舗や倉庫の敷地にする

といった利用が該当します。

農林水産省も、農地を駐車場や資材置き場などとして利用する場合には農地転用に該当し、原則として農地法に基づく許可、市街化区域内農地の場合は届出が必要と案内しています。

「自分の土地だから自由に駐車場にしていい」というわけではない点に注意しましょう。

農地法4条と5条の違い

農地転用を調べるとよく出てくるのが、「農地法4条」と「農地法5条」です。

大きな違いは次の通りです。

区分主なケース具体例
農地法4条権利移動を伴わず自ら転用自分の農地を自分で駐車場にする
農地法5条転用を目的とした権利の設定・移転を伴う農地を借りた事業者が駐車場等に転用する

農林水産省の資料でも、第5条は権利の設定・移転を伴う転用として整理されています。

たとえば地主が自分の畑を自分で駐車場にするなら、基本的には4条の転用です。

一方、事業者が地主から土地を借り、その土地を農地以外の用途へ転用する場合は5条が関係します。
大阪府でも、第5条について「所有者又は耕作者以外の者が、新たに権利の設定・移転を受け、農地を転用する場合」と案内しています。

この違いは、「費用を誰が払うか」を法律で決めるものではありません。
どのような転用手続きが必要なのかを判断するための違いと考えましょう。

市街化区域なら「許可」ではなく届出で済む場合がある

農地転用というと「必ず許可を取る」と思われがちですが、市街化区域内の農地は扱いが異なります。

市街化区域内の農地については、あらかじめ農業委員会へ届出を行えば農地転用許可を要しない仕組みがあります。

そのため、

市街化区域内の農地
→原則として農業委員会への届出。

市街化区域外の農地
→原則として農地転用許可の対象。

という違いを最初に確認しておく必要があります。

なお、具体的な必要書類や手続きは土地の所在地や計画によって異なるため、実際に転用する場合は土地を管轄する農業委員会へ事前に確認しておくとよいでしょう。

農地転用の費用は何にかかる?

「農地転用には100万円かかる」といった情報を見ることがありますが、ここでは農地転用の手続きにかかる費用と、転用後の土地を整備する工事費を分けて考えることが重要です。

実際、自治体へ支払う農地転用の申請手数料自体が高額とは限りません。
たとえば大阪府では、農地法4条・5条の許可申請について申請費用を「不要(無料)」と案内しています。

それでも農地転用に数十万円、数百万円とかかることがあるのは、専門家への依頼費や測量、造成、舗装、設備工事などが加わるためです。

農地転用の手続きにかかる費用

まず考えたいのが、農地転用の申請や届出に関する費用です。

自分で手続きを行えば専門家への報酬を抑えられる場合がありますが、土地の条件や転用計画によって必要書類が多くなることがあります。

実際の許可申請では、登記事項証明書、地籍図、位置図、転用事業計画書、施設の配置を示す図面などが必要になる場合があります。

そのため、行政書士などへ書類作成や申請手続きを依頼するケースもあります。

ここで発生するのは、主に専門家への報酬や必要書類の取得費用です。

「農地転用の申請費」と「行政書士へ依頼する費用」は別物として考えておきましょう。

測量や境界確認にかかる費用

土地の境界が明確でない場合や、転用する範囲を確定する必要がある場合には、測量などが必要になることがあります。

特に農地の一部分だけを利用したい場合や、隣接地との境界が分かりにくい土地では、手続きが複雑になる可能性があります。

ただし、すべての農地転用で必ず高額な境界確定測量が必要になるわけではありません。
土地の状況や計画によって必要性が変わるため、「農地転用=必ず測量費が数十万円」と考えない方がよいでしょう。

造成・舗装・設備工事は農地転用手続きとは別に考える

費用が大きくなりやすいのはこちらです。

農地を駐車場にするなら、土地の状態によっては整地、砕石、舗装、排水設備、フェンスなどが必要になります。
住宅や店舗を建てるなら、さらに造成や上下水道などの工事が必要になることもあります。

これらは「農地転用の許可を取るためだけの費用」ではなく、転用後に予定している土地活用を実現するための工事費です。

したがって、

農地転用手続きにかかる費用
+
土地を使える状態にする費用
+
駐車場・住宅・事業施設などを整備する費用

に分けて資金計画を考えるのがポイントです。

農地転用だけなら比較的小さな費用で済むケースでも、大規模な造成やインフラ整備が必要になれば総事業費は大きくなります。

農地転用費用の負担を項目別に考える

農地転用にかかる費用は、「農地転用申請」「測量」「地目変更」「造成」「設備工事」などに分かれます。

そして、これらを誰が負担するかは一律ではありません。
地主が土地を整えてから貸すのか、借主が自分の事業用地として整備するのかによって考え方が変わります。

まずは全体像を整理してみましょう。

費用項目地主負担になりやすいケース借主負担になりやすいケース
農地転用手続き地主自身が転用する借主の事業利用のために転用する
行政書士報酬地主が手続きを依頼借主側が手続きを進める
測量・境界確認土地自体の境界整理借主の事業計画上必要な測量
地目変更登記地主が土地管理の一環で行う契約で借主負担とする場合
造成・整地地主が造成済みで貸す借主仕様で造成する
舗装・設備土地の基本整備借主専用設備
原状回復契約による借主負担とするケースが多い

この表はあくまで一般的な考え方です。
最終的には契約条件で決める必要があります。

行政書士への依頼費用は誰が払う?

農地転用の申請や届出を行政書士へ依頼する場合、その報酬を誰が負担するかも契約次第です。

地主自身が自宅建築や駐車場経営のために転用するなら、地主が依頼費用を負担するのが自然です。

一方、借主が資材置き場や事業用駐車場として利用するために農地転用を進めるのであれば、借主側で行政書士へ依頼し、その費用を負担する形もあります。

ここで大切なのは、

「申請名義人と費用負担者は必ず同じ」とは限らない

ということです。

手続きを誰が進めるのか、専門家への支払いを誰が行うのかを契約前に決めておきましょう。

測量・境界確認費用は誰が払う?

測量費はトラブルになりやすい項目です。

たとえば、

「境界そのものが不明確なので、貸す前に土地を整理したい」

という場合は、地主側の事情として地主負担になることがあります。

一方、

「借主が土地の一部だけを使いたい」

「事業計画上、正確な配置図が必要」

という場合は、借主側で測量費を負担する契約も考えられます。

特に一筆の農地のうち一部分だけを転用する場合は、測量や分筆が関係することがあります。

このようなケースでは費用も増えやすいため、

誰のために必要な測量なのか

を整理しておくことが重要です。

地目変更登記費用は誰が払う?

農地転用の手続きを行っただけでは、登記簿上の地目が自動的に変わるわけではありません。

実際に土地の利用状況が変わった後、必要に応じて地目変更登記を行います。

たとえば、

田・畑

実際に駐車場として整備

雑種地などへ地目変更

という流れです。

地目変更は土地そのものの登記に関係するため、地主側で行うケースが多いですが、借主が費用負担する契約を結ぶこともできます。

重要なのは、農地転用費用と地目変更費用を一括りにしないことです。

「転用申請費は借主、地目変更登記費は地主」

のように分けることも可能です。

造成・整地費用は誰が払う?

農地を駐車場や資材置き場などとして使う場合、実際に費用が大きくなりやすいのが造成・整地です。

土地の状態によって、

  • 表土のすき取り
  • 砕石敷き
  • 転圧
  • 排水
  • 法面処理
  • 土留め
  • 舗装

などが必要になることがあります。

地主が「造成済みの事業用地」として貸すなら、地主側で造成費を負担し、その分を賃料へ反映させる方法があります。

一方、借主が自分の事業仕様に合わせて造成するなら、借主負担とする方が自然です。

たとえば資材置き場として使うために大型車が出入りできるよう路盤を強化する工事は、借主側の事業仕様に近い費用です。

電気・上下水道などの設備費は誰が払う?

駐車場や資材置き場なら設備がほとんど必要ない場合もあります。

一方、店舗や倉庫、住宅などでは、

  • 電気
  • 給水
  • 排水
  • ガス
  • 照明
  • 防犯設備

などが必要になることがあります。

土地そのものの基盤整備として地主が工事を行う場合もあれば、借主の事業専用設備として借主が負担する場合もあります。

このあたりも、

土地に残る設備なのか
借主だけが使う設備なのか

で考えると整理しやすくなります。

地主が自分で土地活用する場合の費用負担

地主自身が農地を転用し、その土地で駐車場経営や住宅建築などを行う場合は、基本的に地主が費用を負担します。

理由は単純で、転用後の土地を使うのも地主自身だからです。

自分で駐車場経営をする場合

自分の農地を駐車場へ転用するなら、

  • 農地転用手続き
  • 必要に応じた測量
  • 整地
  • 砕石
  • 舗装
  • 区画線
  • 車止め
  • 排水

などを地主側で準備することになります。

ただし、すべての駐車場でアスファルト舗装が必要とは限りません。

土地の状態や利用方法によっては、砕石舗装など比較的簡易な方法で運用することもあります。

重要なのは、農地転用手続きと駐車場整備費を分けて考えることです。

自宅を建てる場合

農地を自己転用して自宅を建てる場合も、原則として地主側で費用を負担します。

この場合は農地転用だけでなく、

  • 建築確認
  • 開発許可
  • 造成
  • 上下水道
  • 地盤改良
  • 建築工事

など、別の費用が発生する可能性があります。

そのため、

農地転用費が安い=土地活用全体が安い

とは限りません。

特に市街化調整区域では、農地転用とは別に都市計画法上の規制を確認する必要があります。

【関連記事】

市街化区域と市街化調整区域の違いは?建築・土地活用までわかりやすく解説

借主が事業利用する場合の費用負担

借主が地主から農地を借りて、駐車場、資材置き場、倉庫などとして使う場合は、契約内容が特に重要です。

この場合、

「借主が使うのだから全部借主負担」

とは限りません。

借主が転用・造成費を負担するケース

たとえば事業者が、

「この農地を10年間借りて資材置き場として使いたい」

と申し出たとします。

そのために必要な、

  • 農地転用手続き
  • 砕石
  • フェンス
  • 照明
  • 防犯設備

などを借主が負担する契約は十分考えられます。

借主の事業のためだけに必要な工事であれば、借主負担とする方が分かりやすいでしょう。

地主が造成してから貸すケース

一方、地主が、

「事業用地として使える状態まで造成して貸す」

という形もあります。

この場合は地主が造成費を負担し、その分を賃料へ反映させることも考えられます。

たとえば、

未造成の農地:月5万円
では借り手がつかない。

造成済み事業用地:月10万円
なら借り手がつく。

という判断で、地主が先に投資するケースです。

この場合は地主側に初期投資リスクがありますが、土地の商品力を高めることにもつながります。

長期契約なら分担するケースもある

20年、30年など長期で借りてもらえる場合は、地主と借主で費用を分担することもあります。

たとえば、

地主:農地転用・造成の基本費用
借主:建物・設備・舗装など事業専用工事

と分ける方法です。

長期契約では費用だけでなく、

  • 契約期間
  • 中途解約
  • 原状回復
  • 建物や設備の帰属
  • 契約終了後の土地の状態

までセットで決めておきましょう。

農地を売却する場合は誰が農地転用費を払う?

農地転用の費用負担で迷いやすいのが売買です。

たとえば地主が農地を売り、買主が住宅や店舗を建てるケースです。

この場合も、

「売主が払う」「買主が払う」と法律で一律に決まっているわけではありません。

売買条件として決めます。

売主が転用手続きを進めるケース

売主が農地転用許可などの条件を整えてから売却する場合は、売主側が専門家費用などを負担することがあります。

「転用可能な状態にして売る」ことで、買主が見つかりやすくなる場合もあります。

買主負担にするケース

一方、

「農地のまま売却し、買主側の事業計画に合わせて転用手続きを進める」

という方法もあります。

買主がどのように土地を使うかによって転用内容が変わるため、買主負担の方が合理的なケースもあります。

売買契約に転用許可を条件として入れることもある

農地を転用目的で売買する場合は、

農地転用許可が得られることを契約の条件にする

ケースがあります。

許可が得られなかった場合に契約をどうするのか、費用を誰が負担するのかなども事前に決めておくことが重要です。

特に高額な造成費を先に支払ってしまうと、許可が得られなかった場合の損失が大きくなる可能性があります。

農地を売買する場合は、不動産会社や行政書士など専門家へ相談しながら進める方が安心です。

農地転用と地目変更は別の手続き

農地転用と地目変更は混同されやすいですが、目的が異なります。
農地転用は、農地を農業以外の用途に使うために必要となる許可・届出等の手続きです。
一方、地目変更は、実際の土地利用が変わった後に登記簿上の地目を実態に合わせる手続きです。

農地転用は「使い方を変える前の手続き」

たとえば畑を駐車場にする場合、まず必要な農地転用手続きを確認します。
市街化区域内なら届出で進められる場合があり、それ以外では許可が必要になるケースがあります。

つまり、農地転用は「これから農地以外に使うための手続き」です。

地目変更は実際の利用状況が変わった後に行う

農地転用の許可や届出を済ませただけで、登記簿上の地目が自動的に変わるわけではありません。
実際に土地の利用状況が変わった後に、必要に応じて地目変更登記を行います。

たとえば田や畑を駐車場として整備した場合、実際の利用状況によって「雑種地」などへ地目変更することがあります。
住宅を建てた場合には「宅地」となるケースがあります。

重要なのは、

農地転用=必ず宅地になる

ではないことです。

地目変更費用も契約で決めておく

借地の場合は、地目変更登記にかかる費用を地主と借主のどちらが負担するのかも決めておきましょう。
土地そのものの登記なので地主側で対応するケースもありますが、借主の事業によって必要になった変更として借主が費用負担する契約も考えられます。

農地転用費だけでなく、

転用申請・造成・地目変更・撤去・原状回復

まで含めて費用分担を整理しておくことが重要です。

そもそも農地転用が難しい土地もある

農地だからといって、すべて簡単に転用できるわけではありません。
転用計画を立てる前に、その土地がどのような区域にあるのかを確認する必要があります。

農用地区域内農地は転用のハードルが高い

農業振興地域内の農用地区域に指定されている農地は、原則として農業目的で利用する土地です。
そのため、農地転用をする前に農用地区域からの除外手続き、いわゆる農振除外が必要になる場合があります。

ただし、希望すれば必ず除外できるわけではありません。
土地の条件や地域の農業振興計画によっては転用が難しいこともあります。

市街化調整区域は農地転用だけでは終わらない

市街化調整区域にある農地では、農地転用だけ確認すればよいわけではありません。
建物を建てる場合などは、都市計画法上の開発・建築規制も関係します。

つまり、

農地転用できる=自由に住宅や店舗を建てられる

とは限りません。

この点は土地活用で非常に重要です。

【関連記事】

市街化区域と市街化調整区域の違いは?建築・土地活用までわかりやすく解説

農地転用できても土地活用に向かない場合がある

農地転用が可能でも、土地活用として採算が合わない場合があります。
たとえば、

  • 接道条件が悪い
  • 大きな造成費が必要
  • 排水工事が高額
  • 周辺に需要がない
  • 高低差が大きい

といった土地です。

「転用できるか」と「転用した方が得か」は別問題です。
費用をかけて転用する前に、転用後の収益性まで確認しましょう。

契約前に確認したい5つのポイント

地主と借主の間で農地転用を伴う契約をする場合は、費用負担を曖昧にしないことが大切です。

1. 農地転用手続きの費用を誰が払うか

まず、行政書士などへ依頼する場合の報酬や必要書類の取得費用を誰が負担するのか決めます。
「借主が使うから当然借主」と口頭だけで進めず、契約書に記載しておきましょう。

2. 測量・造成・設備費を誰が払うか

農地転用手続きとは別に、測量や造成、舗装、排水、設備工事などが必要になる場合があります。
それぞれの費用を地主と借主のどちらが負担するのか項目ごとに決めておくとトラブルを防ぎやすくなります。

3. 転用できなかった場合の費用をどうするか

農地転用許可を前提に契約を進めても、必ず許可されるとは限りません。
許可が得られなかった場合、

  • 契約を解除するのか
  • 行政書士費用を誰が負担するのか
  • 測量費はどうするのか

まで決めておきましょう。

4. 契約終了時の原状回復をどうするか

借主が造成や舗装をした場合、契約終了時にそのまま返してよいのか、撤去・原状回復が必要なのかを決めます。
特に砕石、フェンス、照明、コンテナなどを設置する場合は重要です。

5. 固定資産税など転用後の負担も確認する

農地から駐車場や宅地などへ利用状況が変わることで、固定資産税の負担が変わる可能性があります。
農地転用前の税額だけで判断せず、転用後の維持費も含めて事業収支を確認しましょう。

農地を駐車場として活用する方法

農地転用後の活用方法として、駐車場を検討する方もいるでしょう。
ただし、農地のまま駐車場として貸すことはできません。
必要な農地転用手続きを行い、車を安全に停められる状態に整える必要があります。

月極駐車場として貸す

転用後、周辺に長期的な駐車需要があるなら月極駐車場として貸す方法があります。
住宅街や事業所周辺など、継続利用する人がいる地域では検討しやすいでしょう。

駐車場シェアとして貸す

一方、

「いきなり月極契約にするほど需要があるか分からない」

という場合は、駐車場シェアで需要を見る方法もあります。

特Pなどの駐車場シェアサービスでは、空いている日時だけ貸し出すことができます。
ただし、繰り返しになりますが、農地のまま登録するのではなく、必要な転用手続きを済ませて駐車場として利用できる状態にした後に検討しましょう。

【関連記事】

駐車場シェアと月極はどっちが得?収益・手間・向いている人を6項目で比較

小さく需要を見るなら特Pも選択肢

転用後の土地を駐車場として利用できる状態にしたものの、

「本当にここで借りる人がいる?」

という場合は、まず駐車場シェアで反応を見る考え方があります。

特Pは初期費用・月額費用・掲載費用をかけずに始められるため、周辺の駐車需要を確認しやすいサービスです。

ただし、農地転用や造成にすでに大きな費用をかけている場合は、駐車場シェアだけで回収できるかを慎重に考えましょう。
「転用したから特Pにすればいい」ではなく、月極や他の土地活用も含めて比較することが重要です。

農地転用の費用についてよくある質問

Q. 農地転用費用は地主が必ず払うのですか?

いいえ。
地主が必ず支払うと一律に決まっているわけではありません。
地主自身が転用するなら地主負担になりやすい一方、借主の事業利用のための転用なら借主負担とする契約もあります。

最終的には契約で明確に決めておくことが大切です。

Q. 借主に農地転用費用を全額負担してもらえますか?

契約条件として合意できれば、借主が負担するケースは考えられます。
ただし、測量や地目変更、地主側の事情で必要な工事まで全額借主負担になるとは限りません。

費用をまとめて「農地転用費」とせず、項目ごとに分けて交渉する方が分かりやすいでしょう。

Q. 農地転用の手続きだけならいくらかかりますか?

手続き内容や専門家へ依頼するかによって異なります。
自治体への申請手数料自体が無料のケースもありますが、行政書士への報酬や必要書類の取得費などがかかることがあります。

また、農振除外、測量、開発許可などが必要になれば費用は増えます。
「農地転用は最低○万円」と一律に考えない方がよいでしょう。

Q. 農地転用は行政書士に依頼しないとできませんか?

必ず行政書士へ依頼しなければならないとは限りません。
自分で手続きを進められるケースもあります。

ただし、土地条件や転用内容によって必要書類が多くなることがあり、農振除外や開発許可など他の手続きが絡む場合もあります。
不安な場合は、土地を管轄する農業委員会や専門家へ相談するとよいでしょう。

Q. 農地を駐車場にするだけでも農地転用が必要ですか?

原則として必要です。
農地を駐車場として利用することは農業以外の用途への転用に該当します。

市街化区域内農地では届出で進められる場合がありますが、自己判断で砂利を敷いて駐車場として利用しないようにしましょう。

Q. 地目変更費用は地主と借主どちらが払いますか?

これも契約によって決めます。
土地登記に関係するため地主側で対応するケースもありますが、借主の事業によって必要になった地目変更として借主が費用を負担する契約も考えられます。

Q. 農地転用すれば必ず建物を建てられますか?

いいえ。
農地転用の許可や届出と、建築できるかどうかは別の問題です。

用途地域、市街化調整区域、接道、開発許可など別の規制も確認する必要があります。

まとめ|農地転用費用は「契約で誰がどこまで払うか」を決める

以上、「農地転用の費用は誰が払う?地主と借主の負担・相場・注意点を解説」というお話でした。

農地転用の費用は、地主が必ず払う、借主が必ず払うと法律で一律に決まっているわけではありません。
地主自身が土地活用するなら地主負担になりやすく、借主の事業利用のための転用なら借主負担とする契約もあります。

特に重要なのは、農地転用費をひとまとめにしないことです。
行政書士費用、測量、地目変更、造成、設備、原状回復などに分けて、それぞれ誰が支払うのかを契約前に決めておきましょう。

また、農地転用できても、その土地に自由に建物を建てられるとは限りません。
市街化調整区域や農用地区域などでは、別の許可や手続きが関係する場合があります。

農地を駐車場などとして活用する場合も、まず必要な転用手続きを確認し、その後に月極や駐車場シェアなどの活用方法を比較することが大切です。

「転用できるか」だけでなく、転用費用をかけた後に採算が合う土地活用なのかまで確認してから進めましょう。

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