
屋内型トランクルームを始めようとすると最初にぶつかるのが「アパートローンって使えるの?」という疑問です。気持ちはよくわかりますし、僕も最初は同じ発想でした。
でも実務を見ていくと、基本線はアパートローンではなく“事業性ローン”です。
今回はその理由や、事業性ローンで進めるときのポイントを先にまとめておきます。
屋内型トランクルームは事業性ローンが現実的
まずはっきり言うと、屋内型トランクルームはアパートローンの対象ではありません。
アパートローンはあくまで「居住用賃貸」が前提で、銀行は“住む人が入る建物”を対象にしています。
一方、屋内型トランクルームは建築基準法上“倉庫(物品保管用)”の扱いです。人が住む建物ではないため、銀行としては『住宅投資ではなく事業投資』と判断します。
だから基本はこの流れになります。
アパートローン → NG
事業性ローン(プロパー融資・事業融資) → OK
ここを理解しておくと、融資づくりの方針がブレなくなります。
なぜトランクルームは「事業」扱いなのか
屋内型トランクルームはアパートと違って、収益構造やリスクの性質がまったく別物だからです。
・利用者の入れ替えが早い
・区画サイズが多様で単価差が大きい
・近隣の競合の影響を受けやすい
・稼働率が季節で波打つことがある
・自主管理なのか委託なのかで収益性が大きく変わる
銀行はこれらを「事業リスク」と捉えます。
つまり、家賃収入で淡々と返済していく“アパート経営”とは別枠で見られるわけです。
結果として、事業性ローンのほうが合理的で審査の考え方とも合っています。
それでも“例外的に”アパートローンが出るケースはある
例外はあります。
例えば次のようなケースです。
・商業スペース付き物件の一部をトランクルームにする
・マンション1階の空きテナントを区画して貸す
・地銀・信金が独自判断で「ほぼアパート扱い」として認める
とはいえ、あくまで例外。
期待するとブレるのでおすすめしません。

実務的には事業性ローンのほうが動きがスムーズ
事業性ローンは「事業を評価して融資する」仕組みなので、トランクルームと非常に相性が良いです。
銀行が見るのはこのあたり。
・需要調査(人口・世帯・競合)
・想定稼働率の根拠
・運営方式(委託か自主管理か)
・建設費と利回りの妥当性
・土地の担保価値
・借入額に対して返済が無理ないか
トランクルームの計画は数字がシンプルなので、事業性融資の審査ポイントと噛み合いやすいんですよね。
さらに、
・新築でも既存建物コンバージョンでも使える
・建設費1000万〜3000万円でも扱ってくれる
・プロパー融資で柔軟に条件を作れる
といったメリットがあります。
信用金庫・地銀は特に“前向き”
意外に思うかもしれませんが、屋内型トランクルームの融資は大手銀行よりも信用金庫・地方銀行が前向きです。
理由はシンプルで、
・地域の空き家問題、遊休スペース問題と相性が良い
・建設費がアパートより小さく、返済計画が立てやすい
・副業層や小規模事業者を積極的にサポートしている
という“地域金融”の方向性とマッチしているためです。
副業で始める人ほど、信金や地銀のほうが話が早い印象です。
トランクルーム×事業性ローンの資金調達フロー(現場で多い形)
以下は、僕が見てきたトランクルーム案件で最も多いパターンです。
1.事業計画(想定稼働率・運営方法・区画数)をまとめる
2.信用金庫または地銀へ持ち込み
3.需要調査の細かい質問に答える
4.土地の担保評価を実施
5.金利・返済期間・自己資金割合の調整
6.融資決定
7.着工・運営開始
アパートより提出資料は少なめ。
特に「運営委託するかどうか」で評価も変わります。

事業性ローンを通しやすくするポイント
需要調査を“自分の言葉”で説明できるようにしておく
数字が正しいことも大事ですが、「どうしてその稼働率になると考えたのか」という説明力も評価されます。
銀行はあなたが事業を理解しているかどうかを確認したいからです。
委託運営の場合は「実績のある会社」を示す
大手運営会社の実績データは審査にかなり響きます。
稼働率の安定性を裏付けられるからですね。
自己資金は1〜2割入れる
事業性融資では自己資金ゼロはほぼ通りません。
少額でも“本気度”として見られます。
事業性ローンを使うメリットとデメリット
メリット
・トランクルームの収益構造と審査基準がマッチしている
・返済期間の調整が柔軟
・小規模投資でも融資が組める
・副業オーナーでも相談しやすい
デメリット
・金利はアパートローンより少し高い
・資料準備や説明の手間がある
・個人保証が必要なケースが多い
とはいえ、アパートローンがそもそも難しい以上、デメリットというほどのデメリットではありません。
屋内型トランクルームにアパートローンを期待しすぎないのが正解
以上、トランクルームはアパートローンを使える?本筋は事業性ローンの理由...というお話でした。
・屋内型トランクルームは建築基準法上“倉庫扱い”でアパートではない
・アパートローンは原則使えない
・代わりに事業性ローンが最もスムーズ
・信金・地銀・公庫を中心に組み立てると現実的
・需要調査と運営方法を固めれば融資は通りやすい
トランクルームは小さな投資で土地を収益化できる優秀な手段です。
無理にアパートローンにこだわらず、事業として評価してもらう方向で進めるのが一番安全で確実です。
