貸家建付地と自宅用地の違いとは?制度の目的と評価減になるポイント

相続税対策

相続税の計算で「自宅の土地」と「賃貸に出している土地」が異なる評価を受ける理由とは。
どちらも同じ面積・同じ場所でも、貸家建付地として運用していれば評価額が下がり、相続税が軽減される仕組みがあります。
この違いは、単なる“節税の裏ワザ”ではなく、土地を社会的に有効活用している人を評価する制度的な意図に基づいています。
本記事では、貸家建付地と自宅用地の評価の違い、その制度の目的、そして税務上で「事業として認められやすくする」ための具体的なポイントを解説します。


目次

貸家建付地と自宅用地の違いとは

まず、基本的な考え方を整理しておきましょう。

  • 自宅用地(自用地):自分や家族の居住のために使っている土地。
  • 貸家建付地:他人に貸す目的で建物を建て、その建物を貸している土地。

どちらも所有しているのは同じ人ですが、
他人が占有している土地=所有者が自由に使えない土地と見なされるため、貸家建付地の方が評価額が下がります。


制度の目的:「社会的に有効な土地利用を促す」ため

この制度が作られた背景には、相続税の軽減よりも大きな社会的狙いがあります。

日本には、長年にわたり「空き地」や「遊休地」と呼ばれる使われていない土地が多数存在しています。
もし相続税が現金や土地を同じ100%評価で課税されると、「相続税の負担を避けるために土地を放置する」という状況が続いてしまいます。

そこで、国は以下のような意図で制度を整備しました。

他人に貸して社会に役立つ形で土地を使うなら、その分評価を下げましょう。

つまり、貸家建付地の評価減は「節税優遇」ではなく、土地の有効利用を促すインセンティブ(社会的報奨)なのです。


評価の仕組み

自宅用地と貸家建付地の評価の違いは、次のように計算されます。

自宅用地(自用地)

評価額=路線価×地積

貸家建付地

評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

たとえば借地権割合70%、借家権割合30%、賃貸割合100%なら、
1-(0.7×0.3×1.0)=1-0.21=0.79 → 自宅用地より約21%評価が下がります。

さらに、建物も貸家として評価額が下がるため、土地+建物でトータル40〜60%程度の相続税評価減になるケースもあります。


評価減が認められやすいアプローチ①:実態ある賃貸運営を示す

税務署が注目するのは、「本当に他人に貸しているか」という実態です。
契約書や家賃入金記録など、第三者に貸している証拠を残すことが大切です。

  • 賃貸借契約書を全件保管する
  • 家賃入金の通帳を整理しておく
  • 管理会社との委託契約を明示する

これらの書類が整っていれば、税務署から「実質的に自用地」とみなされることを防げます。


評価減が認められやすいアプローチ②:長期的な貸付継続

貸家建付地としての評価は、一時的な貸付ではなく継続的な賃貸事業が前提です。
相続直前に建てただけでは「節税目的の形式的貸付」と判断されるおそれがあります。

少なくとも1年以上の継続運営実績を作り、確定申告で不動産所得として記載しておくと、事業実態の証拠になります。


評価減が認められやすいアプローチ③:適正な賃料設定

極端に安い家賃や、親族への名義貸しでは、「実態のない貸付」と見なされて否認されるケースがあります。

  • 周辺相場に基づいた賃料設定
  • 利用者が第三者であること
  • 空室時も募集広告を継続していること

これらを整えておくと、経済活動として成立している貸家と判断されやすくなります。


貸家建付地の評価減を最大限活かす考え方

制度の本質は「節税」ではなく「資産の有効活用」です。
そのため、税務署は“節税だけが目的”の貸付には厳しい一方で、きちんと運営し、社会的にも合理的な事業として成り立っているケースには寛容です。

つまり、

  • きちんと貸している
  • 継続して収入を得ている
  • 管理・運営をしている
    この3点を満たしていれば、評価減は正当に適用されます。

自宅用地との使い分けをどう考えるか

相続全体の設計では、すべてを貸家にするのではなく、自宅用地(特定居住用宅地の特例:330㎡まで80%減額)との組み合わせが有効です。

つまり、

  • 自宅:80%評価減(特定居住用宅地)
  • 貸家:20〜30%評価減(貸家建付地)
    を組み合わせることで、無理なく節税と資産防衛の両立が可能になります。

「節税のために貸す」ではなく「活かすために貸す」

以上、貸家建付地と自宅用地の違いとは?制度の目的と評価減になるポイント...というお話でした。

貸家建付地と自宅用地の評価の違いは、国が土地の有効活用を促すために設けた制度的な差です。

評価減を受けること自体が目的ではなく、

  • 継続的に貸している
  • 社会的にも合理的な活用である
  • 書類・運営の実態が整っている
    この3つを満たしていれば、制度の趣旨に沿った形で認められやすくなります。

相続税対策を考えるときは、数字の節税よりも「次の世代が無理なく維持できる土地利用」を優先しましょう。

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