
トランクルームや駐車場のような「手堅い活用」に対して、より高い利回りを狙うなら、住宅系や事務所系の土地活用が候補に挙がります。
アパート、賃貸マンション、テナントビル、サービス付き高齢者住宅などは、うまくいけば利回り8〜10%以上も期待できる分野です。
ただし、住居系土地活用は「事業リスク」と「空室リスク」がつきものです。今回は高利回り経営について解説します。
高利回り型土地活用のリスクとは
住居系などの高利回りを狙える土地有効活用に考えられるリスクは大きく3つ
- 建築コストと初期投資が大きい
- 立地の影響を強く受ける
- 高利回り=高リスクの覚悟が必要
ひとつずつ見ていきましょう
1.建築コストと初期投資が大きい
高利回り型の活用では、建築費が数千万円〜億単位になるケースがほとんどです。
たとえば木造2階建てのアパートでも、10戸規模で建てれば建築費は7,000〜9,000万円。
鉄骨造・RC造のテナントビルやマンションなら1億円を超えるのが一般的です。
このため、融資金利の上昇や空室期間の長期化があると、すぐに収支が崩れます。
特に昨今は建築資材と人件費が上昇傾向にあり、「予定していた利回りが実現しない」というケースが増えています。
2.立地の影響を強く受ける
トランクルームは「狭小地でもOK」「駐車場があれば地方でも成り立つ」活用ですが、アパートやオフィスは立地の善し悪しが事業成否を左右します。
・最寄り駅まで徒歩圏か
・周辺に競合物件が多いか
・地域の人口動向が増加傾向にあるか
このあたりを冷静に分析せずに建ててしまうと、長期空室・家賃下落といったリスクを抱えることになります。
一度建ててしまえば簡単には用途転換できないため、「建てて終わり」ではなく「運営を見越した戦略設計」が欠かせません。
目的の土地周辺の賃貸ニーズがどのくらいあるか、賃料はどのくらいを期待できるか、などなど、suumoやHOMESといったサイトで実際に検索して調べてみることが、土地活用の種別を考えるうえで必須ともいえるでしょう。
3.高利回り=高リスクの覚悟が必要
トランクルームが「小さく始めて安定的に続けられる」活用であるのに対し、アパート・テナントは「投資と経営のバランス」が問われる事業です。
想定利回りが高いほど、
・入居者トラブル
・退去後の原状回復費
・空室時のローン返済負担
といった「運営リスク」も跳ね上がります。
特に近年は、人口減少による賃貸需要の頭打ちや、オフィス需要の減少など、市場全体が右肩上がりとは言えない状況です。

それでも挑戦する価値はある
ここまでリスクの話をしてきましたが、住居系などの「リスク型土地活用」にも明確な魅力があります。
それは、長期的な資産形成と節税効果です。
建物を所有することで、固定資産税の軽減や相続税対策になるほか、土地の「稼ぐ力」を最大限に引き出せます。
また、近年では一部の工務店や土地活用会社が「リスク分散型プラン」を提供しており、たとえば1階を店舗・2階を住宅にする「複合型テナント」や、介護事業者との提携による「高齢者住宅+サービス事業」など、事業性を担保しつつリスクを分散するモデルも増えています。
専門家の視点から
私自身、トランクルームの技術系社員として20年間、さまざまな地主様の土地活用を見てきました。
トランクルームで成功する人は「安定重視」、一方でアパート経営で大きく伸ばす人は「リスクを理解した上で挑戦するタイプ」でした。
どちらが正しいという話ではなく、「自分がどこまでリスクを取れるか」を見極めることが、土地活用の第一歩です。
