共有私道の固定資産税はなぜ代表者に来る?税金肩代わりのフシギ

共有私道の固定資産税

共有私道の税金はなぜ代表者にくるんでしょうか。

共有名義の土地は法律上「共有者全員に連帯して納税義務がある」状態になっています。
地方税法では共有者はお互いに連帯して固定資産税を負担することになっており誰か一人が払わないときは他の共有者がその分も含めて納めなければならない仕組みです。

しかし実務上共有者全員に納税通知書をバラバラに送ると自治体側の事務が膨大になります。
そのため多くの自治体では「代表者」を一人決めてその人のところに納税通知書をまとめて送る運用をしています。

東京都の一部自治体では「相続人代表者指定届」「共有名義代表者変更届」などの様式を用意し、相続や共有が発生したときに代表者を決めてそこへ納税通知書を送ることを明記しています。

>「相続人代表者指定届(兼固定資産現所有者申告書)とは」国立市公式サイト

この結果代表者のところに毎年まとめて納税通知書が届き代表者が全額を納めたうえで他の共有者に自分の分を請求するという構図になりやすいのです。


目次

代表者が肩代わりし他の共有者から徴収せざるを得ない典型パターン

連絡がつかない共有者がいる場合

古い私道では持分を持っている人の中に転居先不明や相続で所在不明になった人が混ざっていることがよくあります。
自治体としては誰かに請求しないと税金を回収できないため代表者に納税通知書を送りそこから徴収してもらうしかありません。

この場合代表者は「自分の持分分+所在不明者の持分分」を一旦負担し後から回収できないリスクを抱えることになります。

「私は使っていないから払わない」という共有者がいる場合

共有私道を実際に日常利用している家とそうでない家が混在していると税負担への温度差が生まれます。
私道を生活道路としてフルに使っている側からみると「使っているなら払って欲しい」と感じますが共有者の中には「うちは裏の公道から出入りしているから私道は使っていない」という理由で税負担や補修費への協力を拒む人もいます。

 PDF「私道の課税と評価」(財)MIA協議会

しかし法律上は持分を持つ以上「使っていないから払わない」は通用せず、代表者が肩代わりしてしまうと泣き寝入りになりやすいのが現実です。

相続後に代表者だけがきちんと対応してしまったケース

親の代から続く私道を兄弟姉妹で相続した場合などに一人だけが市役所や都税事務所に足を運んで手続きを進めた結果その人がそのまま代表者として固定資産税を支払い続けることも珍しくありません。

相続登記が終わっていない場合でも東京都などでは「相続人代表者」の指定届を提出すると代表者に納税通知書が送られる仕組みになっておりきちんと動いた人ほど実務負担を背負い込む構図になりがちです。


自治体ごとの取扱いの違いと共通点

共有私道の税負担の基本は、どの自治体でも「共有者全員に連帯して納税義務がある」点で共通しています。
そのうえで代表者への一括送付や私道の非課税制度など細かな運用は自治体ごとに違いがあります。

代表者指定と私道非課税制度の自治体例

以下は代表者への納税通知書送付や私道の非課税制度を明示している自治体の一例です。

自治体納税通知書の扱い(代表者)私道の非課税・減免制度の概要
東京都(23区・市町村)相続人代表者指定届や共有名義代表者変更届を提出すると代表者宛に納税通知書を送付。相続登記前でも法定相続人全員が連帯して納税義務を負うと説明。国立市公式サイト道路として利用され一定の要件を満たす土地は「公共の用に供する道路」として固定資産税・都市計画税を非課税とする制度がある。所有者からの申告が必要。東京税務局
大阪市固定資産税は共有者が連帯して納税義務を負うとしたうえで私有道路の非課税認定や評価額ゼロの認定を受けるための申告窓口を設置。大阪市私有道路のうち公共の用に供されるものは非課税公共用道路に準ずる道路は評価額0や10分の1とする制度を運用。所有者からの申告後に認定。大阪市
東大阪市共有に関する詳しい記述は少ないが「私道を公共用に供している場合には申告後に実地調査を行い認定されれば固定資産税・都市計画税を非課税とする」と案内。東大阪市サイト公共の用に供する道路の非課税要件を細かく列挙し使用料を取らない門扉等で通行を制限しない幅員2メートル以上両端が公道に接する等を条件としている。東大阪市サイト
福岡市周辺固定資産税全般の減免制度や納税猶予については詳細な解説があるが私道非課税については自治体ごとに判断が分かれており福岡市天神の新天町通路が長年非課税だったものの課税対象になった例も報告されている。宮川公認会計士税理士事務所商店街通路のような私道が非課税から課税に変更されるケースもあり「今まで非課税だから今後もずっと非課税」とは限らないことがわかる。宮川公認会計士税理士事務所

こうして見ると大都市圏では
・代表者指定届を用意して納税通知書の送付先を一本化する
・私道の非課税や評価額軽減の制度を設け申告制で運用する
という二本立てで共有私道を扱っていることが分かります。


共有私道の代表者が取っておきたい実務的な対策

共有者間で「税と維持費の負担ルール」を書面化する

代表者が税を肩代わりしている場合は特に各共有者が持分割合に応じて毎年いくら負担するのかいつまでに支払うのかを覚書や合意書にしておくことが重要です。
将来相続が重なり共有者が増えたときもこの文書をベースに説明できます。

代表者変更や納税管理人の届出も確認する

代表者側の家庭に相続や転居があったときにそのまま放置すると納税通知書が届かなくなり督促や延滞金の原因になります。
東京都の一部自治体では共有名義代表者変更届や納税管理人申告書を用意しているので代表者の変更や海外転居がある場合は早めに手続きをしておきましょう。

 「共有名義代表者変更届の例」大目市公式サイト

私道の非課税申告ができないか調べる

共有私道が実際に公共の通り抜け道路として使われている場合は
東京23区の「道路非課税申告」
・大阪市や東大阪市の「公共の用に供する道路の非課税認定」
のような制度で税負担を軽くできる可能性があります。

申告が通れば代表者が肩代わりする税額そのものを減らすことができます。

まずはご自身の自治体のホームページで「私道 非課税」「道路非課税」などのページを確認してみるとよいでしょう。

共有状態が重荷なら将来的な解消も選択肢に

共有者が多く所在不明者もいるようなケースでは代表者の負担が増え続けるだけになりがちです。
共有持分の買取りや共有物分割請求などで共有状態を整理することも長期的には検討に値します。


共有私道の代表者の税肩代わりは制度上想定された状態だが

以上、共有私道の固定資産税はなぜ代表者一人に来るの?税金肩代わりのフシギ...というお話でした。

共有私道の固定資産税が代表者一人にまとめて請求されるのは、自治体側の事務を簡略化しつつ法律上の連帯納税義務を担保するための仕組みです。
その結果、代表者が一旦全額を肩代わりし他の共有者から徴収するという構図が事実上の前提になっています。

ただしそれは代表者がすべてを我慢しなければならないという意味ではありません。
自治体の制度を確認しながら
・代表者指定や変更を適切に行うこと
・共有者間で税と維持費の負担ルールを明文化すること
・私道非課税などの制度を活用してそもそもの税額を減らすこと
・負担があまりに重い場合は共有状態の解消も検討すること
これらを意識するだけで将来のトラブルをかなり減らすことができます。

なお本記事は一般的な制度の説明であり個別事案の税額計算や取扱いは自治体や税理士に確認する必要があります。

共有私道の税負担に不安がある場合は、納税通知書を手元に置いたうえで、地元の資産税課や税務相談窓口に相談してみてください。

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