相続税対策の見せかけ事業【否認事例】節税NGとならない回避策とは

貸付事業用宅地と認められなかった事例

相続税対策としてトランクルームや駐車場を始めたのに、税務署から「貸付事業ではない」と否認されるケースが増えています。

貸付事業用宅地として否認された事例とその理由、回避するための実務ポイントを解説します。


目次

「節税のために建てた」は最も危険なスタートライン

相続税対策の相談でよくあるのが、「税金を減らすために何か建てたい」という考え方です。
しかしこの発想こそが、後々「見せかけ事業」と判断されるリスクを生みます。

税務署は「相続税を減らす目的で形だけ作った貸付事業」に非常に厳しく、実態のない運営は小規模宅地等の特例や貸付事業用宅地の減額を認めないことがあります。

ここでは、実際に否認された事例とその理由、そして同じ失敗を防ぐための対策を紹介します。


否認事例①:相続直前に設置したコンテナ型トランクルーム

ある土地オーナーは、相続が近い親の名義土地にコンテナトランクルームを設置。
相続発生の2か月前に業者へ設置を依頼し、すぐに貸出を開始しました。

しかし、税務調査の結果——

「相続発生時点で賃貸契約が成立していなかった」
「事業としての継続性が認められない」

として、貸付事業用宅地の特例を否認されました。

問題点

  • 開業から相続までの期間が短すぎる(2か月)
  • 契約書・収支帳簿が整備されていなかった
  • 実際には空室が多く、運営実態が乏しかった

教訓

節税のために「とりあえず置いた」だけでは事業とみなされません。
最低でも1年以上継続運営している実績を作り、帳簿・契約を整えることが重要です。


否認事例②:親族への貸付で“事業性なし”と判断

別のケースでは、アパートの1階をトランクルームとして整備し、相続前に「貸付事業」として特例申請をしました。

ところが、貸していた相手は実質的に親族や知人のみ
賃料も相場より安く、収益性がほとんどなかったため、

「実質的な事業とはいえない」
「節税目的の形式的貸付である」

と判断され、特例の適用が否認されました。

問題点

  • 利用者が親族中心で、第三者への貸付がほぼなかった
  • 市場相場に比べて家賃が不自然に安い
  • 宣伝・募集活動の実態がない

教訓

身内中心の“名義貸し”や形式的な契約は通用しません。
第三者への貸付があること、相場に見合った賃料設定であることが重要です。


否認事例③:稼働率が低く「事業として成立していない」

相続対策で駐車場を整備したケースでは、区画数10台のうち、稼働していたのはわずか2台だけ。

税務署は次のように指摘しました。

「事業として成立しておらず、実態のない遊休地利用である」

結果、貸付事業用宅地の特例が適用されず、相続人は数百万円の追徴課税を受けました。

問題点

  • 稼働率が20%しかなかった
  • 貸付募集をしていた証拠(広告・契約書等)がなかった
  • 管理報告や収支記録も存在しなかった

教訓

「事業性があるか」は、契約数と収入の実態で判断されます。
稼働率が極端に低い状態では、相続対策とは認められません。


なぜ税務署は“節税目的の貸付”を認めないのか

務上の特例は、「社会的に有益な貸付事業を行っている人を支援する」ための制度です。
そのため、単に税金を減らすためだけの目的で始めた場合、「経済的合理性がない」として除外されるのです。

税務署が注目するのは、「本気で事業をしているか」という点。

  • 契約書が整備されているか
  • 広告・募集をしているか
  • 利用者が複数存在するか
  • 収支帳簿をつけているか
    これらが揃って初めて“事業”と判断されるのです。

否認を防ぐためにやるべき5つのこと

① 早めに事業を開始する

相続の数年前から始め、1年以上の運営実績を作ることが重要。
相続直前の開業は避けましょう。

② 契約書・領収書・帳簿を整備する

契約ごとに書面を残し、賃料の入金・支出を明確に記録します。
確定申告書にも「事業所得または不動産所得」として記載を。

③ 稼働率を維持する

複数の利用者に貸していることが事業性の証拠になります。
空室が多い場合は、募集広告やHPを残して「貸付努力」を示しましょう。

④ 管理体制を明確にする

清掃・点検・トラブル対応などを管理会社に委託し、契約書を保管しておくこと。
「管理していない状態」は事業性が疑われます。

⑤ 節税目的だけを前面に出さない

相談時や説明資料で「相続税対策のために設置した」と書くと、その文言が否認の根拠になることもあります。
あくまで「事業として成り立つ計画」であることを重視しましょう。


「節税は結果」であって「目的」ではない

多くの否認事例に共通しているのは、「相続税を減らすこと」自体が目的化していたことです。

トランクルームや駐車場は、本来「貸付事業」という経済活動です。
事業としての継続性・収益性・運営体制が伴わなければ、税務上の優遇を受ける資格はありません。

節税は「事業が成立した結果として得られる副産物」。
この順序を誤らないことが、最も確実な相続対策です。


まとめ|“見せかけ事業”を避け、実態ある運営を

以上、相続税対策の見せかけ事業【否認事例】節税NGとならない回避策とは...というお話でした。

相続税対策のつもりで始めた貸付事業が否認されるケースは、近年増加しています。

  • 相続直前の形式的開業
  • 身内だけへの貸付
  • 契約・帳簿なしの運営

こうした“見せかけ事業”は、税務署に必ず見抜かれます。

相続対策は「事業を装うこと」ではなく、「事業として成立させること」。
早めに始めて、実態を整え、継続的に運営する——
その積み重ねこそが、真に認められる相続対策の形です。

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